映画

高校生にお勧め、大人には・・・ 『リアル鬼ごっこ』

佐藤翼(石田卓也)が街で喧嘩に明け暮れるころ、世間では苗字が佐藤の人ばかりが怪死する事故や事件が相次いでいた。ある日、喧嘩相手のチンピラまがいに捕まってピンチのとき、翼は突然、似て非なる別世界にワープしてしまう。そこでは、佐藤さんの数を減…

青春はブリ大根のように 『人のセックスを笑うな』

北関東のちょっとした街、開け放たれた広野の冬。美大に通うみるめ(松山ケンイチ)とえんちゃん(蒼井優)と堂本(忍成修吾)はいつもつるんで遊んでいる。ある朝方、3人が乗ったトラックはトンネルのなかで幽霊、いや幽霊のような女を目撃する。やがてそれ…

甘美な昭和懐古で終わらせない 『母べえ』

昭和15年、支那事変は泥沼化し、日本中が徐々に暗い影のなかに佇もうとしていた。東京の野上家にも心配事があった。ドイツ文学者の父べえ(坂東三津五郎)の著書が検閲を通らなくなった。ある2月の寒い日、父べえは特高に連行されてしまう。父べえの無事を祈…

なにかいいところはあったか 『KIDS』

そのなにもない街にアサト(小池徹平)はやってきた。タケオ(玉木宏)が彼を見つけたのは、ある食堂だった。テーブルにあった塩を超能力で手元に引き寄せていた。タケオは面白がってアサトを外に連れ出すが、そこで不良たちに絡まれる。一匹狼の荒くれ者の…

アイデアはいいが演出の調和に難あり 『音符と昆布』

もも(市川由衣)は家で留守番をしていた。音楽家の父親(宇崎竜童)が海外に出かけてしまったためだ。よくある話のはずが、その日だけは違っていた。呼び鈴が鳴るのでドアを開けると、かりん(池脇千鶴)と名乗る、不思議な言動の女性が立っていた。彼女は…

小津+ギャグ+ダメ人間= 『全然大丈夫』

古本屋の息子・照男(荒川良々)は植木屋に勤めてはいるが、30歳を目前にしてなおふらふらしていてだらしなく、ホラー趣味で他人を怖がらせることだけに執念を燃やしている。一方、友達の小森(岡田義徳)は病院清掃の管理者として真面目にこつこつ働く。照…

お定まりを抜け出せない 『テラビシアにかける橋』

ジェスの家は6人家族、周囲の家々に比べれば、かなり切り詰めた生活をしている。そのせいなのか、学校では虐められている。ある日、転校生がやってきた。レスリーという快活な女の子だが、はっきりと主張するがゆえに周囲と馴染めず、なんとなくジェスと似た…

もうひとつの大阪物語 『子猫の涙』

昭和43年、メキシコオリンピック。ボクシングで銅メダルを獲得した森岡栄治(武田真治)は、その後プロに転向するも成績芳しくなく、引退してからは無職でぶらぶらしていた。夜遊びと女癖が災いし、ひとり家計を支えるお母ちゃん(紺野まひる)の怒号が絶え…

金返せ、交通費込みで 『ちーちゃんは悠久の向こう』

最近、ついていない。会社でたまるストレスのせいもあるが、それ以上にツキに見放されている感じがする。昨日の出来事だけでもずいぶんなものだ。 昨日は映画を2本観ると決め込んで、銭湯に行ってから東京に向かうことにした。そしたら、着替えとタオルを家…

今年も勝手に映画大賞2007

昨年大晦日の産経で佐伯啓思氏が述べるところによると、現代を表す言葉はニヒリズムなのだそうだ。「これまで自明なものとして信じられてきた諸価値の崩壊」の結果、「ある者は瞬時の刺激や快楽を求める刹那的快楽主義に走り、ある物は、所詮何をしても無意…

演出力の高さが総合力にならなかったのが惜しい 『風の外側』

(今回もあらすじを省いた簡潔な感想で) あらためて感心するのは、奥田瑛二監督の演出力の高さである。そもそも、江原啓之と綾戸智絵をキャスティングした眼力がすごいのだが、彼らが芸暦の長いバイプレイヤーにしか見えない。綾戸にいたっては、エンドロー…

年末の3本勝負 感想は控えめで

先日、わがベストテン候補をいくつか挙げました。その際には書きませんでしたが、敬愛する市川準監督の作品を入れられなかったのはたいへん悔しいです。今年はごり押しもできませんでした。きっとまたいいスポンサーを得て、グッとくる作品を撮ってくれるで…

師走に涙の借金取り到来か

正月映画の季節がやってきた。各社、この時期に自信作を投入してくるとあって、師走は何かと忙しい。あくまで偶然とは思うが、今日公開された2作がどちらも、わが故郷・北海道を舞台にし、昭和を回想し、白血病を取り扱っている。そして、自信作らしく、観客…

グッとくるものはないけれど 『椿三十郎』

9人の若侍は藩の汚職を追及しようとしている。もっとも話の分かるだろう大目付の菊井に持ちかけたところ、ぜひ話を聞きたいというので、彼らは社殿に集まり、事の行方について話し合っている。ところがその社殿、見知らぬ浪人(織田裕二)の寝床で、話をすべ…

機微の積み重ねがある一瞬に至るまで 『愛の予感』

北海道・勇払、冬。男(小林政広)は、我が子を同級生に刺し殺され、失意からこの街の住人となった。いまは下宿先から製鉄所に通っている。下宿の食堂には、無口で下を向いてばかりいる女(渡辺真起子)が勤めている。見覚えがあった。加害者の母親だ。男に…

日本映画だ、だから面白い 『ミッドナイト イーグル』

戦場カメラマン・西崎(大沢たかお)は、もう戦争に行きたくなかった。シャッターを押しても誰の命も救えないと思っていた。いまはひとり、日本アルプスに登って、自然を撮影して過ごしている。その山中に、謎の光が落ちていった。その直後の自衛隊機のスク…

スマートで丁寧なロードムービー 『逃亡くそたわけ―21才の夏』

学生の花ちゃん(美波)は高校生の時分から躁と鬱に悩み、幻聴と幻覚にも苦しんでいて、両親は福岡の病院に入れた。その病院をプリズンと呼ぶ花ちゃんは、一生をここで暮らしたくないと、同じく鬱病で入院中のなごやん(吉沢悠)を連れて脱走してしまう。何…

ゆるきなかにも礼儀あり 『転々』

大学8年の文哉(オダギリジョー)には84万円の借金があった。ある日、突然に借金取りの男(三浦友和)が部屋に上がりこんできて、3日以内に金を用意するよう言いつけるのだが、文哉に策があるわけがない。ところが数日後に現れた男は、金をやるから自分に付…

骨太な作品に舌鼓を打つ 『犯人に告ぐ』

6年前、大晦日。巻島(豊川悦司)は誘拐犯を捕獲するため、張り込みをしていた。しかし、寸でのところで捕り逃し、子供は殺され、その両親に人殺し呼ばわりされ、左遷する。足柄でそれなりにのんびり過ごしていた巻島だが、かつての上司・曾根(石橋凌)が本…

予定調和の国民映画、だからこそいい 『ALWAYS 続・三丁目の夕日』

いわゆる「涙のカツアゲ」*1から2年。夕日町が帰ってきた。駄菓子屋の茶川(吉岡秀隆)は少年雑誌向けの小説を書きながら、淳之介(須賀健太)と貧しい暮らしをしていた。そこにふたたび淳之介の実父(小日向文世)が現れ、息子を連れ戻そうとする。それを嫌…

これを痛快と呼ばずしてどうする 『やじきた道中 てれすこ』

新粉細工職人の弥次郎兵衛(中村勘三郎)は、小銭稼ぎのために指の模造を依頼する女郎の喜乃(小泉今日子)にすっかり惚れてしまった。足を洗わせるほどの稼ぎもないつかず離れずの関係に、喜乃が仕掛けて遊郭を足抜けしてしまう。そこに偶然出くわした、弥…

佳作以上名作未満 『オリヲン座からの招待状』

オリヲン座を閉館することにした。留吉(原田芳雄・加瀬亮)は、ゆかりのある人たちに、最終興行への招待状を書いた。思えば大津から無一文で京都にやってきてから、数十年というときがたっていた。トヨ(宮沢りえ)は先代と昭和25年にオリヲン座を開いた。…

テレビが土足で上がってくる 『自虐の詩』

大阪。オンボロのアパートで若いふたりが暮らしている。イサオ(阿部寛)は極道から足を洗ったが、ろくに働きもせず、舎弟たちと遊んでばかり。虫の居所が悪くなると、ちゃぶ台をひっくり返して食事をだめにしてしまう。そんなイサオをどういうわけが愛して…

生きることと生きていることの強烈な表現 『Mayu ―ココロの星―』

まゆ(平山あや)は医者になりたかった。子供のころから、母親(浅田美代子)は幾多の病に冒され、克服してきた。その姿をずっと見てきた。しかし医学部への3度のチャレンジも実らず、出版社に勤めるようになった。恋人ができ、母親も何度目かの入院生活を終…

さよならだけの人生へ 『クワイエットルームにようこそ』

ライターの明日香(内田有紀)は多忙な毎日を暮らしていたが、気がつくと、真っ白な病室のベッドで拘束されていた。そこは精神科病院のなかでも隔離された"クワイエットルーム"だった。どうして隔離されたのか。やがて同居していた鉄ちゃん(宮藤官九郎)が…

大きな問題と小さな楽しみ 『サウスバウンド』

東京で暮らす二郎と桃子の兄妹の父・一郎は(豊川悦司)かなりの変わり者で評判だ。かつて過激派のリーダーで鳴らしていたらしいが、そんなことよりも、正義感だけは強く、偏屈でろくに働かず、貧乏だということのほうが問題である。しかし父親譲りの正義感…

久しぶりのちゃぶ台返し 『クローズド・ノート』

教師志望の学生・香恵(沢尻エリカ)が引っ越してきた古いアパートには、鏡のついた扉があり、その向こうの小さな棚には、前の住人・伊吹(竹内結子)が取り忘れた小物が残されていた。そのひとつに、日記があった。それを紐解くと、彼女は小学校の教師で、…

これは浄土ムービーだ 『めがね』

春。温暖な小島に飛行機でやってきたタエコ(小林聡美)は、大きなトランクを引きずって、民宿のハマダにたどりついた。観光でやってきたつもりだったが、観光するような場所はどこにもない。民宿の主・ユージ(光石研)や、春にしかやってこない不思議な女…

渋谷で唖然とす、あるいは『たとえ世界が終わっても』

たまには都内の空気でも吸わないと。渋谷も日曜の松涛界隈であれば、とくに昨日のような雨模様であればなおのこと閑静であり、職場が都内にあってあと少し所得があればこんなところに住みたいものだとひとりごつのであった。 とまれ、雨のなか思い切って渋谷…

肉体と哲学ですべてつながっている 『一万年、後・・・・。』

男(阿藤快)は、次元を飛び越えて、1万年後の世界にやってきた。昭和風の日本家屋に出現した彼は、1万年後にもいろいろなものが残っているものだと実感するが、もはやその土地は日本でなく、アメリカもない。建物の外は危険な世界だ。ときどき電波の障害で…