日本映画だ、だから面白い 『ミッドナイト イーグル』

戦場カメラマン・西崎(大沢たかお)は、もう戦争に行きたくなかった。シャッターを押しても誰の命も救えないと思っていた。いまはひとり、日本アルプスに登って、自然を撮影して過ごしている。その山中に、謎の光が落ちていった。その直後の自衛隊機のスクランブル。数少ない情報をもとに墜落現場に向かった西崎と記者の落合(玉木宏)は、この国の出来事と思えない驚愕の光景に遭遇する。それは国の存亡をかけたいまだかつてない事件だった。
予告編を見る限り、ハリウッド的スケールの作品と見え、正直言って僕の好きな分野でないので回避しようと思っていた。そうしたらキネ旬寺脇研の評価がえらくいい。最近、氏の評価と僕の好きな作品がかなり重なるもので、よもやとおもい出かけてきた。たしかに、これは面白い。そして泣けてしまった。
(念の為、筋の展開上、今回は続きを伏せておきましょう)
さっさと筋を書いてしまえば、山中に落ちた物体はステルスで、ものすごく危険な爆弾を積んでいた。それが爆破したら数百万の死者が出るので、国家として対処するということなのだが、このストーリーはほかのどの国にも描けないだろう。筋にしろ、表現方法にしろ、紛れもなく日本の映画であって、アメリカや韓国の大作の真似事ではない。だから面白い。
なにしろ、国家がなんとも頼りないのだ。自衛隊が二手に分かれて山中のステルスを探しに行くのだが、ステルスから脱出した工作員にほとんどをぱたりぱたりと射殺される。政府は米軍から知らされていない情報もあった。せっかく工作員の掃討にやってきたヘリコプター部隊も、悪天候で引き上げてしまう。
現実問題としてこういった事態はいくらでもあるに違いないけれど、アメリカも韓国も、個人は死んでも国家の情けない様子を映画で表現しない。とはいえ今作が自国の啓発のためにあるのではない。作品を観れば分かる。国家がどうしたというレベルではない。そもそも日本人に国家などという枠組みへの愛着があるとは思えない。焦点は、あくまでひとりひとりの生と死、あるいはその光景を目の当たりにした者の機微にあるのだ。
奇跡があるわけでなく、いずれみんな死ぬという状況を、「動」でなく「静」で捉える。死ぬために生きる、よく生きよく死ぬという仏教的な観念も見える。その死に成功も無駄もない。それはこれまで日本映画が得意としてきたことのはずで、成島出監督の演出はこの点に集約されている。さまざまな登場人物の日常、過去、死を受け入れる様子が、編集も含め、非常に丁寧に表現されている。だからこそ、大胆な爆破がなくても、壮大なスケールを描くことができる。同じパラダイムを経てきた日本人同士だから理解できる悲喜こもごもがある。それでこそ日本の作品らしさではなかろうか。
演出という点でいうと、出演者たちが皆とてもいい。複雑な心境に対する表情のよさにかんしては、今年の作品のなかでも群を抜いているのではないか。主要キャストのみならず、脇役の金子さやか濱田岳までもよく見える。類似の作品とはちょっと違う。