2008-03-01から1ヶ月間の記事一覧

きれいごとではない、生きていくということ 『memo』

学校で、とても簡単な小テストが満足に解けない。解いているうちにペンを持つ手が震える。頭に描かれた言葉を書き留めずに入られない。テスト用紙を裏にして、つながりのない言葉を書きなぐる繭子(韓英恵)は、強迫性障害を抱え、カウンセリングを受けてい…

人に憑かれる死神の話 『Sweet Rain 死神の精度』

死神は不慮の死を遂げようとする者に寄り添い、人生の目的を果たしたかどうかを判定する。多くの場合はそのまま「実行」、すなわち死に至るが、時には目的に果たしていないとして「見送り」になる者もいる。死神の千葉(金城武)の次の対象者は、バブル期の…

山岳ベース・考 (実録・連合赤軍おかわり)

あの作品から3日4日と経過したが、いまなお熱情に引きずられている。その感覚が『紀子の食卓』のときに似ているので、なんとなしに比較しそうになる。以下、乱暴な文章になるだろうが、熱を引くためのおかわりを書く。気が向いたらどうぞ。 いわゆる山岳ベー…

ザ・カズシゲ 『ポストマン』

千葉県の漁師町の郵便局で配達員をしている海江田龍兵(長嶋一茂)は、昔ながらの自転車"バタンコ"で町を回る毎日。同僚からは古臭いと言われながらも、手紙を届けながら町中の人に挨拶をするのが楽しみであり、使命感もある。彼は2年前に妻・泉(大塚寧々)…

わざわざスクリーンで観るものでもなし 『ブラブラバンバン』

中学を卒業したら吹奏楽は辞めるつもりだった。入学した高校の吹奏楽部も廃部していた。しかし白波瀬(福本有希)は、音楽室でホルンを吹く2年生の芹生(安良城紅)を目撃してしまう。彼女のボレロに合わせて白波瀬がトランペットを吹くと、突然彼女は発情し…

組織が朽ちていくことの克明な記録 『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』

(長い作品で、感想もつい長くなってしまった) 60年安保闘争の敗北で諸派に分裂していた共産主義者同盟(ブント)は、数年後に再統合されていた。明治大学の学費値上げに反対する集会に参加していた遠山美枝子(坂井真紀)は、重信房子(伴杏里)と知り合い…

無自覚なご都合主義 『犬と私の10の約束』

函館で暮らすあかり(福田麻由子、田中麗奈)は14歳。大学病院に勤める父親(豊川悦司)は帰りが遅く、母親(高島礼子)とふたりで暮らす毎日だったが、その母親が突然入院してしまう。父親と朝食をとるある日、庭から子犬がやってきて、家に入ってしまう。…

狂気の沙汰はどっちだ 『接吻』

閑静な住宅街で、幼い子供を含む一家3人が鈍器で殴られて殺害される事件が起こった。やがて捜査線上に浮かんだ坂口(豊川悦司)という男は、マスコミに犯行声明を送りつけ、あえてマスコミのカメラに囲まれて逮捕された。OLの遠藤(小池栄子)は、坂口のカメ…

ステレオタイプが物語をどうさせたか 『ガチ☆ボーイ』

4月。大学のキャンパスではサークルの呼び込みが絶え間ない。彼らをすり抜け、五十嵐良一(佐藤隆太)がたどり着いたのは、憧れのプロレス研究会だった。とはいえ良一はすでに3年。司法試験の一次試験に合格したこともある秀才がなぜプロレスに。ともかく練…

理解しようとして失敗 『ライラの冒険 黄金の羅針盤』

この世の中とはすこし違う世界で、世界は"教権"の支配下にあった。そのなかで長い間ひた隠しにされたこと、それは、世界は無限に存在し、それらがダストという物質でつながっているということだった。学者のアスリエル卿は北極にダストの存在を明らかにする…

ストイックであるが故の豊かな表現 『明日への遺言』

昭和20年5月、名古屋は米軍機による無差別爆撃により、多くの死傷者を出した。その際銃撃を受けた米軍機からは、幾人かのパイロットがパラシュートで降下し、日本軍に逮捕され、処刑された。それを指揮した岡田資(藤田まこと)をはじめとする東海軍の元軍人…