理解しようとして失敗 『ライラの冒険 黄金の羅針盤』

この世の中とはすこし違う世界で、世界は"教権"の支配下にあった。そのなかで長い間ひた隠しにされたこと、それは、世界は無限に存在し、それらがダストという物質でつながっているということだった。学者のアスリエル卿は北極にダストの存在を明らかにするが、支配者は彼を嫌い、また統治のための恐ろしい戦略を実行に移しつつあった。アスリエル卿の姪、ライラは世界にひとつしかない"真理計"を使える唯一の人物であり、それを手に北に向かうのだった。
アメリカ産の壮大なファンタジー映画というと、これまでにも大作はいろいろとあったが、個人的にはこれがはじめて。映像の贅沢さや細やかさはさすが、すばらしい。ストーリーの中心である真理計(=黄金の羅針盤)は、占い師の水晶玉のようなものだ。白雪姫に出てくる鏡というか。水晶や鏡なら、その向こうに何かが見えてもおかしくないが、羅針盤だと、予言に導く際の映像にどうしても無理が生じる。重箱の隅を突付く行為と言われそうだけれど。
それにしてもまたもやパラレルワールドか。3部作の1つ目だそうだけれど、作品の背景がものすごく難解で、それを理解しようと一生懸命観た僕みたいな人は、苦労する割に収穫がない。テレビ的解説を排除しているのは評価できるが、辞書がない状態で横文字だらけの文章を読むような気分になる。指輪をとってきます、みたいなワンテーマがあれば助かったんだけどなあ。それって、せっかく作品に奥深さがあるのに、否定するような観客のわがままだろうか。
次回作は現実のこの世界が扱われるそうだから、それで安心して、1作目のおさらいができることを期待したい。いくら連続しているとはいえ、今作の終わり方はあっけない。あと10分、尺を延ばしても問題なかったと思うので、せめてそこで世界をとっくり見せてもらいたかった。政治のこととか、いろんな種族のこととか、階級や、教権が仕掛ける秘密裏の政策のことも。それ以上に、ものすごい数の敵と見方のことをもっと知らないと。
本当は、知らないままがーっと見てわーっと思えばいいんだろうな。子供の映画だと思うし。ダコタ・ブルー・リチャーズはよかった。ダニエル・クレイグも。