2006-01-01から1年間の記事一覧

今年も勝手に映画大賞2006

どういうわけか今年ではや4回目の企画だということを、つい先ほど発見しました。ちなみに2003年の第1回からの歴代1位は、『阿修羅のごとく』、『茶の味』、『ALWAYS 三丁目の夕日』です。意外と家族モノに弱い一面が出てしまっていますね。 今年は観たり観た…

なんとなく60点 『酒井家のしあわせ』

次雄(森田直幸)は次男で、兄は父と一緒に交通事故で死んだ。いまは継父(ユースケ・サンタマリア)と母(友近)、その間の子とともに暮らしている。反抗期だ。ある日、継父が出て行った。"男"ができたのだという。母は実家近くに引っ越すと言っている。む…

青春は遠きにありて思うもの 『気球クラブ、その後』

気球クラブは、短い間だったが、存在した。主催する村上(長谷川朝晴)は、おんぼろの家屋で、恋人の美津子(永作博美)と暮らしていた。クラブがなんとなくなくなりかけていたころ、村上が死んだ。いまだらだらとつながっている二郎(深水元基)やみどり(…

描写と役者陣の活躍に感激 『鉄コン筋クリート』

クロ(二宮和也)とシロ(蒼井優)は、幼くして、開発を逃れて取り残された古びた街・宝町(たからまち)をひそかに取り仕切っている。そこにある日、ヤクザのネズミ(田中泯)が訪れ、再開発のための土地の買い上げが進行していく。しかしクロとシロはそれ…

市川崑がまだ生きている 『犬神家の一族』

方々で散々な書かれ方をし、ありとあらゆる部分を非難されている。いやはや忙しいこの時期に面白くない作品を観るというのも、しかし前売りを買ってしまったし。といささか気乗りしない感じで観にいったのだけれど。 なあんだ、すごく面白いじゃないか! 大…

いま奥田瑛二が面白い 『長い散歩』

かつて教師をしていた松太郎(緒方拳)は、教育者である一方、家庭を崩壊させた張本人でもあった。妻が死に、家を整理して、古いアパートで質素なひとり暮らしを始めた。その生活は平穏でなかった。隣人の女(高岡早紀)は、内縁の男とだらしない暮らしをし…

太陽の色などとてつもなくたくさんあるから*1

ほんとか。こんこんがアドミッション・オフィスでSFCに行けるというのは。 どんな思惑と意思と目的があるにせよ、とても喜ばしいことじゃないか。まず祝おう。さまざまな大学とキャンパスがあるなかで、いいところを選んだと思う。大学は、入ってからどう過…

ファンタジーは崩壊せり 『NANA2』

ロックバンド・ブラストとして、恋人を引き抜いたトラネスの妥当を目指すナナ(中島美嘉)と、確たる夢はないがいつも夢見心地の奈々(市川由衣)はルームメイト。失恋明けの空っぽな奈々は、憧れの男性、トラネスのタクミ(玉山鉄二)の巧妙なアプローチで…

季節の終わりに ハロプロ楽曲大賞2006選評

いろんな人びとの引退があり、青空の時代がすっかりいなくなってしまいました。大きな流れから見れば不遇の数年を過ごしたのではないかと思いますが、凡人であるがゆえの魅力を精いっぱい出しつづけて、あるイズムを表現したとともに、次につながる仕事をし…

ご冗談を入れなさいよ、山田さん 『武士の一分』

下級武士の三村新之丞(木村拓哉)は毒見役として城内で働く。家では妻(檀れい)と仕えの徳平(笹野高史)の3人暮らし。あるとき、なんの意味もないと感じられた毒見役の新之丞が、食中毒により失明してしまう。自暴自棄の新之丞を見守る妻は、親族の誘いに…

田中麗奈がやってきたヤァヤァヤァ 『暗いところで待ち合わせ』

ヤァヤァヤァってホントに便利な言葉だ。とりあえず使っておけばなんとかなりそうな感じがする。卵とじみたいなものか。 ミチル(田中)は幼いころの事故が元で、徐々に視力を失い、今は全盲の状態。やがて父親に先立たれ、ひとり暮らしを余儀なくされる。そ…

ドッペルゲンガー、梅喜さん、『パプリカ』

他人の夢に侵入し共有することで、心理状態を把握し治療する。それを可能にする機会「DCミニ」が盗まれた。そして、他人の夢に進入して精神状態をコントロールする「テロ」が始まった。事態を収拾しようとするパプリカや研究所所長、刑事までもが、夢と現実…

酔いどれ 今年のハロプロと帯広の豚丼

映画の感想以外は、酔いどれでないとなかなか書けません。肝心の映画は、この土日に一切映画館に行きませんでした。今日の午後に久々に『東京物語』をDVDで観たぐらいですね。廊下やふすまを利用した「縦の風景」が小津的でいいですね。『淑女は何を忘れたか…

メガネ歴17年

さきほどテレビに、富士メガネの金井昭雄氏が出演していた。国連から表彰されたのを受けてのことだそう。実はわたくし、この店舗をよく使っている。もともと両親が利用していたので、僕もついて行ったわけだけれど、一度ここを利用してしまうと、なかなかほ…

きれいぶっても感動できない 『待合室』

岩手県一戸町小繋。かつて岩波新書にもなった小繋事件の舞台である。簡単に説明、というのは困難だけれど、山林の土地所有権と入会権をめぐる100年前からの争いで、死者も出ている。学生時代、研究内容に非常に近かったので、現地視察に出かけたこともある。…

躍動する映画 『トンマッコルへようこそ』

朝鮮戦争のさなか、盛り返す連合軍の物資供給路に程近いトンマッコルには、戦争のことなどなにも伝わってはいなかった。このまま穏やかに暮らしていけるはずだったのだが、アメリカの軍人が墜落してやってきて、また陸路から南北の兵士がそれぞれ漂着して、…

ちょっと寝ました 『キャッチボール屋』

タカシ(大森南朋)は会社をリストラされ、とりあえず故郷に帰ってきた。久しぶりに高校時代の野球部OBたちと飲んだくれ、勢いで当時好きだった女性を探しに東京に出てしまう。が、朝になってすでに記憶なし。どうして東京に来たのか、自分は何をしたいのか…

佳作まであと一歩 『幸福のスイッチ』

村の電器屋「イナデン」は村じゅうに親しまれる存在。社長と呼ばれる誠一郎(沢田研二)は電池の交換や修理、家具の移動に至るまで、ほとんど報酬のない状態で請け負う。3姉妹の次女・怜(上野樹里)はそんな父親を嫌い、恨んでさえいた。いつもすねていた。…

不器用に歩け

こんこんの引退以来、おかげさまですっかり映画に傾倒してしまい、"その界隈"を横目で流す日々を送っておりました。そのことがまったく不自然でなく、ここでも話題にする必要性を感じませんでした。しかしその存在には十分敬意を払っているつもりです。だっ…

すいませんやられました 『虹の女神 Rainbow song』

あおい(上野樹里)が死んだ。岸田(市原隼人)があおいに会ったのは、彼の度重なる恋愛遍歴の途上、好きな人とバイトを代わってもらいたくて談判したときだった。岸田は変わっていたけれど、とぼけていて、まっすぐな青年だ。あおいは大学の映画研究部にい…

この監督はミニマムテーマがお奨めだな 『早咲きの花』(東京国際映画祭後編)

三奈子(浅丘ルリ子)は近いうちに失明するといわれ、カメラマンとして活動する海外から帰国、故郷の豊橋を訪れる。そこで出会った高校生たちと語りながら、戦時中の兄との思い出を振り返る。幼い時分、つねに兄にくっついて回っていた三奈子だったが、その…

名演光るドキュメンタリー・ファンタジー 『日本の自転車泥棒』(東京国際映画祭前編)

男(杉本哲太)は、気がおかしくなったように、衝動的に自転車を盗んで漕ぎ出した。雪の積もる釜石を発ち、音信を絶やし、峠を越え、南下する。あるときは馬小屋で、またあるときはビニルハウスで夜を越え、また新たな自転車を盗んでは進んでいく。なにが彼…

たとえサスペンスでも山下節 『松ヶ根乱射事件』(東京国際映画祭前編)

凍てつく地方都市、鈴木家の双子兄弟の弟(新井浩文)は派出所の警察官、兄(山中崇)は気の向いたときだけ家業の牧場経営を手伝う体たらくな日々を送っている。ある日、兄はひき逃げを起こし、タチの悪い被害者の連れ(木村祐一)に連れまわされる羽目に。…

『紀子の食卓』と虚構をめぐるメモ(酔いながら)

1 先日の『紀子の食卓』では、虚構というキーワードがありました。ある閉じられた社会(サークル)で役割を演じること(レンタル家族)によって、雑事雑念から解放されて、楽になる。本当であるかのように見える偽善的な家族や社会より、虚構をとことん愉し…

うなずこうかそっぽむこうか 『紀子の食卓』

正確には昨日鑑賞したわけですが、1日でこうも色の違うおっきな作品を観てしまうと、胃もたれしますね。観ているあいだはとにかく夢中であっという間なんだけどね。 紀子(吹石一恵)には、田園都市での家族の生活も、街も地域社会も、必然には感じられなか…

   『フラガール』

本当にいい音楽は解説を拒絶すると早川義夫は言うけれど、本当にいい映画だって同じことなんだと思う。いま、この作品は、僕になにも書くなと言っている。それも、北風ではなくて、太陽のようにやんわりと、しかし力強く。『69 sixty nine』の李相日が、こん…

暇つぶしをもって劇場へ 『いちばんきれいな水』

小学生の夏美(菅野莉央)は夏休みも塾通いを欠かさない。真面目といえばそうだけど、どこか熱をもてない、はじけられないものを感じていた。でもそういうものだと思っていた。夏美には姉(加藤ローサ)がいる。難病で11年間も眠っている彼女は、色も白くま…

サキは爆死でよかったのに 『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』

少女(松浦亜弥)は不法入国と不法滞在、傷害の罪でニューヨークから強制送還された。札付きのワルだった。母親をただの飲んだくれだと思っていたが、その母親こそが、かつての特命刑事・麻宮サキ。ひとり強制送還が許されず、アメリカで有罪判決を受ける見…

残酷な生き物の残酷な描写 『ストロベリーショートケイクス』

東京にはさまざまな女性が住んでいる。たとえば、本人曰く最悪で惨めな失恋を乗り越えたデリヘルの受付・里子(池脇千鶴)、自意識と勝気だけは強いが食べては嘔吐する日々を送るイラストレーター・塔子(岩瀬塔子)、漫然とお茶くみOLをしながらすぐに男に…

すべては朝にとけゆく 『夜のピクニック』

貴子(多部未華子)には秘密がある。誰しも、それは恋なのだと思っていたし、それが嘘だとは本人にも言い切れない。でも、秘密は秘密だ。気になる人がいる。西脇だ(石田卓也)。その人は貴子にとって、いやお互いがお互いにとって特別で、そのことを知る者…