今年も勝手に映画大賞2006
どういうわけか今年ではや4回目の企画だということを、つい先ほど発見しました。ちなみに2003年の第1回からの歴代1位は、『阿修羅のごとく』、『茶の味』、『ALWAYS 三丁目の夕日』です。意外と家族モノに弱い一面が出てしまっていますね。
今年は観たり観たりで、実に71本(うち外国映画は6本)。捨てがたい作品があまりに多くて、選考に苦慮いたしました。ひそかに溜め込んでいた作品ごとに印象的だったキャストとスタッフのメモと、いくつかの評価基準*1を元に、作品10本、主演10人、助演15人を選出しました。スタッフ編は今年は断念します。来年できれば。
2006年の作品十選
評価軸の取り方で順位がガラッと変わってしまうのが難しいところで、鑑賞後の印象のよさで言えば3か9が1位になると思います。実際、去年の順位付けというのがまさにそのとおりになっていて、巷の記者評とほとんど変化ないものになっていました。しかし今年においては、来年以降の日本映画界の発展を祈念する意味で、新鮮であったり、現代の問題を映し出していたり、国際的にも勝負できそうなものだったりについては、積極的な評価をすることにしました。その結果がこれです。
1は、僕が普段選ぶ映画にしてはかなり異色ですが、芸術というジャンルに括れる数少ない作品で、完成度も非常に高く、思い切って選出しました。2の映像と演出の面白さも高評価です。3は言わずもがなの名画。廣木監督(4)は『ヴァイブレータ』以来でしたが、より洗練された感じがします。5はとにかく作品のよさ、6,7は現代の負の感覚と向き合った良作。何本か鑑賞したアニメーションからは、リメイクのアイデアがすばらしい8を。そして圧倒的な映像で捨てがたい9。10は個人的に非常に好きな作品で、ごり押しさせていただきました。
2006年の主演十選
- 寺島しのぶ 『やわらかい生活』
- 宮粼あおい 『好きだ、』『初恋』
- 中谷美紀 『嫌われ松子の一生』
- 西島秀俊 『好きだ、』
- 田中麗奈 『暗いところで待ち合わせ』
- 多部未華子 『ルート225』『夜のピクニック』
- 市原隼人 『チェケラッチョ!!』『虹の女神 Rainbow song』
- 大地康雄 『恋するトマト』
- 小山田サユリ 『ミラクルバナナ』
- 杉本哲太 『日本の自転車泥棒』
2006年の助演十五選
- 蒼井優 『ハチミツとクローバー』『虹の女神 Rainbow song』『鉄コン筋クリート』
- 池畑慎之介 『晴れたらポップな僕の生活』
- 池脇千鶴 『ナイスの森 The First Contact』
- 井上真央 『チェケラッチョ!!』
- 上野樹里 『虹の女神 Rainbow song』
- 瑛太 『好きだ、』『嫌われ松子の一生』
- 大泉洋 『シムソンズ』『釣りバカ日誌17 あとは能登なれハマとなれ!』
- 加藤武 『あおげば尊し』『釣りバカ日誌17 あとは能登なれハマとなれ!』『犬神家の一族』
- 北見敏之 『ギミーヘブン』『早咲きの花』
- 佐藤浩市 『雪に願うこと』『陽気なギャングが地球を回す』『暗いところで待ち合わせ』
- 塩見三省 『三年身籠る』
- 永作博美 『好きだ、』『気球クラブ、その後』
- 古舘寛治 『このすばらしきせかい』『松ヶ根乱射事件』
- 松岡俊介 『やわらかい生活』『紙屋悦子の青春』
- 光石研 『紀子の食卓』『キャッチボール屋』
こちらは人数が多すぎる(リスト化するのに1時間はかかっている)ので、一部だけのコメントを。主演については、上の5人が飛びぬけています。筆頭を誰にするか迷いましたが、精神疾患の表現が圧巻だった寺島しのぶということで。2年連続の選出はふたりいて、うちひとりが多部未華子。映画界に欠かせない役者になりました。『恋するトマト』の作品としての評価はとくにないのですが、大地康雄だけが見事でした。
助演のうち、蒼井優が2年連続選出のもうひとり。ほか、主演を含めると『好きだ、』のおもなキャストが全員リストにいるのですが、選んだあとに気付きました。かなり異色なのは古舘寛治でしょうか。あの強烈なインパクトが頭から離れません。バイプレーヤーに遅咲きのスター誕生の予感です。
さて、来年の展望なのですが、あまり期待していません。90年代の終わりからじわじわきていた日本映画の波が成熟した結果、保守的な大手資本が積極的に介入するようになり、質はともかくとして金だけは効率よく回収していく傾向が出てきました。来年はその傾向がいっそう強まるでしょう。すると必然的に、つまらなくなります。
もしも予想が当たったなら、古い作品の鑑賞に勢力を費やします。それでは今年の更新は、たぶんこれまで。どちらさまもよいお年をお迎えください。
*1:美しさのある作品だったか、映画的な映画だったか、日本映画らしさはあったか、時代を反映するテーマはあったか、キュンときたか(泣けるかどうかではなく、キュン死にしそうな感覚の強さを基準にしてある)を独断と偏見で判断。