2006-10-01から1ヶ月間の記事一覧

すいませんやられました 『虹の女神 Rainbow song』

あおい(上野樹里)が死んだ。岸田(市原隼人)があおいに会ったのは、彼の度重なる恋愛遍歴の途上、好きな人とバイトを代わってもらいたくて談判したときだった。岸田は変わっていたけれど、とぼけていて、まっすぐな青年だ。あおいは大学の映画研究部にい…

この監督はミニマムテーマがお奨めだな 『早咲きの花』(東京国際映画祭後編)

三奈子(浅丘ルリ子)は近いうちに失明するといわれ、カメラマンとして活動する海外から帰国、故郷の豊橋を訪れる。そこで出会った高校生たちと語りながら、戦時中の兄との思い出を振り返る。幼い時分、つねに兄にくっついて回っていた三奈子だったが、その…

名演光るドキュメンタリー・ファンタジー 『日本の自転車泥棒』(東京国際映画祭前編)

男(杉本哲太)は、気がおかしくなったように、衝動的に自転車を盗んで漕ぎ出した。雪の積もる釜石を発ち、音信を絶やし、峠を越え、南下する。あるときは馬小屋で、またあるときはビニルハウスで夜を越え、また新たな自転車を盗んでは進んでいく。なにが彼…

たとえサスペンスでも山下節 『松ヶ根乱射事件』(東京国際映画祭前編)

凍てつく地方都市、鈴木家の双子兄弟の弟(新井浩文)は派出所の警察官、兄(山中崇)は気の向いたときだけ家業の牧場経営を手伝う体たらくな日々を送っている。ある日、兄はひき逃げを起こし、タチの悪い被害者の連れ(木村祐一)に連れまわされる羽目に。…

『紀子の食卓』と虚構をめぐるメモ(酔いながら)

1 先日の『紀子の食卓』では、虚構というキーワードがありました。ある閉じられた社会(サークル)で役割を演じること(レンタル家族)によって、雑事雑念から解放されて、楽になる。本当であるかのように見える偽善的な家族や社会より、虚構をとことん愉し…

うなずこうかそっぽむこうか 『紀子の食卓』

正確には昨日鑑賞したわけですが、1日でこうも色の違うおっきな作品を観てしまうと、胃もたれしますね。観ているあいだはとにかく夢中であっという間なんだけどね。 紀子(吹石一恵)には、田園都市での家族の生活も、街も地域社会も、必然には感じられなか…

   『フラガール』

本当にいい音楽は解説を拒絶すると早川義夫は言うけれど、本当にいい映画だって同じことなんだと思う。いま、この作品は、僕になにも書くなと言っている。それも、北風ではなくて、太陽のようにやんわりと、しかし力強く。『69 sixty nine』の李相日が、こん…

暇つぶしをもって劇場へ 『いちばんきれいな水』

小学生の夏美(菅野莉央)は夏休みも塾通いを欠かさない。真面目といえばそうだけど、どこか熱をもてない、はじけられないものを感じていた。でもそういうものだと思っていた。夏美には姉(加藤ローサ)がいる。難病で11年間も眠っている彼女は、色も白くま…

サキは爆死でよかったのに 『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』

少女(松浦亜弥)は不法入国と不法滞在、傷害の罪でニューヨークから強制送還された。札付きのワルだった。母親をただの飲んだくれだと思っていたが、その母親こそが、かつての特命刑事・麻宮サキ。ひとり強制送還が許されず、アメリカで有罪判決を受ける見…

残酷な生き物の残酷な描写 『ストロベリーショートケイクス』

東京にはさまざまな女性が住んでいる。たとえば、本人曰く最悪で惨めな失恋を乗り越えたデリヘルの受付・里子(池脇千鶴)、自意識と勝気だけは強いが食べては嘔吐する日々を送るイラストレーター・塔子(岩瀬塔子)、漫然とお茶くみOLをしながらすぐに男に…