サキは爆死でよかったのに 『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』

少女(松浦亜弥)は不法入国と不法滞在、傷害の罪でニューヨークから強制送還された。札付きのワルだった。母親をただの飲んだくれだと思っていたが、その母親こそが、かつての特命刑事・麻宮サキ。ひとり強制送還が許されず、アメリカで有罪判決を受ける見込みの母親を救う取引として、少女は母親と同じ名で、特命刑事の任を受けることになった。派遣された高校では、アングラサイトに踊らされた人びとが自爆する、奇妙な事件がおきていた。
あまり真面目に感想を書くのも空気の読み違いという気がする。東映だし、アップフロントだし。なにをいまさら期待したというのかと、ちょっと自分を責めてみたくもなる。きっと、かなりのトップダウンで無理やり映画化が決定し、実質的なストーリーは、指令が降りてきた時点で突貫工事でこさえたものなのだろう。だとすれば、あそこまで作り上げた深作健太はかなりの腕だし、松浦亜弥は圧巻の演技だった。そうかあ、このコンビは面白いなあ。時代劇だな、次は。
べつにストーリーがむちゃくちゃでも、設定にどんなに無理があっても構わない。それで面白いものをつくれるなら、それでいい。やれるもんならやってみい。実際、子供向けの特撮は無理を承知でつくられている。ああこの作品も子供向けと思えばなんのことは...いやPG-12だしなあ。迫力のある映像とあややの気迫だけでおっさんを満足させられると思うなよ。誰かの濡れ場ぐらいあってもいいじゃないか! いやそうじゃなくて、もっと観客と対話できるものがほしいわけだ。同情できたり、反発できたり、応援できたりするものがね。
ところで、4代目スケバン刑事を襲名するにあたり、史上初の世襲が用いられている。世の中、世襲だらけだ。もちろん職人技には暗黙知があって、長く一緒にいた人に継承されていく傾向がつよいわけだから、世襲がダメというわけではない。喜ばしいときさえある。しかしそれは、その職にある親の姿を見て育ったときのことではないかと思う。
設定では、4代目が生まれたのは、初代が特命を降りて何年も経ってからのこと。4代目を儲けるが、その父親が罪人となったことから、元刑事でありながら不法に出国し、アル中でボロボロになっている。だいたい初代をそんな設定にして、歴史を引き延ばしてしまってよかったものか。ものすごく『8Mile』っぽいじゃないか。もういっそ4代目は爆死して、続編なぞつくれないようにしてしまったほうが、歴史がきれいになったと思う。
ここまで書いて改めて思う。あまり真面目に感想を書くのも空気の読み違いだ。