ファンタジーは崩壊せり 『NANA2』

ロックバンド・ブラストとして、恋人を引き抜いたトラネスの妥当を目指すナナ(中島美嘉)と、確たる夢はないがいつも夢見心地の奈々(市川由衣)はルームメイト。失恋明けの空っぽな奈々は、憧れの男性、トラネスのタクミ(玉山鉄二)の巧妙なアプローチで一夜を明かす。そのことが、平穏を保ってきたブラストのコミュニティに亀裂をつくる。ある日、ナナとレン(姜暢雄)の関係が世間に知れることになり、彼らの事態が急展開していく。(以下、ほろ酔いで感想を書いてます)
ねえ、ナナ。売れることと、続編が面白いのとは、どうして別物なんだろう。このストーリー、きついよ。そして眠いよ。キャストが変更されることは『男はつらいよ』のおいちゃんでもそうなんだから構わないけど、宮崎あおいがファンタジーのなかの生き物だったのに、市川由衣にはリアリティが強すぎる。ねえ、ナナ。そんなことはじめから分かってたなんて言わないで。大谷健太郎のことだから、うまくやってくれると思ってたんだよ。たしかに、監督は今回もよかったんだ。市川由衣に罪はないのにね。ねえ、ナナ。渡る世間が鬼ばかりって、映画にするとしんどいね。
そんなわけで、どうしてくれよう。パート1のときから痛いストーリーなのは感じていたのだが、中島の歌と宮崎のつくる雰囲気と監督のストーリーの転がしのうまさで、そこを上手にカバーしてきた。パート2の発表があった時点で、きっと市川にはその役回りはできないだろうし、チバラキ系の恋愛が展開される恐れがあると覚悟していた。しかし大谷監督だし、悪いようにはしないと信じてもいた。
しかし恐れていたものが現実のものとなって、目も当てられない。脚本も担当した監督は、どうやってこのストーリーを終了させられるのかと、ずいぶん苦心したに違いなく、同情の念を禁じえない。それにしても、私小説的なナレーションは多いし、いいことないし、グズグズだし、まるで橋田文学なのだ。それを映画でやられちゃあ困る。それ金曜日あたりにドラマでやってもらえませんか、もちろんTBSで。
ああ書きすぎた。結局のところ、一服たりとも清涼剤を見い出せなかったのが苦しいのだ。どこかワンシーンでもすばらしければ、あとの部分には目を伏せていられるのに。唯一、レコード会社の社員役・田辺誠一がよかった。はまるのかなあと心配していたけど、最終的には彼だけがスクリーンに安心をもたらしてくれたのだと思う。ほか、いろいろ書けばきりがないけど、市川由衣がエロい。濡れ場がないのが悔やまれる。