わざわざスクリーンで観るものでもなし 『ブラブラバンバン』

中学を卒業したら吹奏楽は辞めるつもりだった。入学した高校の吹奏楽部も廃部していた。しかし白波瀬(福本有希)は、音楽室でホルンを吹く2年生の芹生(安良城紅)を目撃してしまう。彼女のボレロに合わせて白波瀬がトランペットを吹くと、突然彼女は発情し、白波瀬を脱がせはじめた。この妙な習性が新入生たちとのトラブルになり、急ごしらえで吹奏楽部が復活、白波瀬も巻き込まれてしまう。素人混じりのメンバーでコンクールの出場を目指す。
ポータルサイトブログ界隈を見ていると、「まずまず」と「だめ」の2論に分かれるようですが、残念ながら僕は後者。企画段階でかなり破綻していたのではないかという印象が否めない。アイドル番組の三文芝居かテレビ東京の深夜ドラマか。ともかくここは映画館なんだぞと抗議したくなった。草野陽花監督の『Pinkの遺伝子』をちょっとだけ見たことがあるが、あれをそのまま映画の世界に持ち込んでしまった。
異端児としての安良城紅の存在感には魅力がある。ただ、演技に魅力があるわけでないし、容姿だけでなく日本語のイントネーションも西洋的で、およそあの父と母(森本レオ原日出子)の間の子とは思えない。まさか父親、よそで産んだのか(それはリアルだ)。成績優秀というのも現実味がない。
新人の主役には、それを支える存在が必要だ。そのもっとも重要な位置にあるのが福本有希という青年なのだが、演出といい、彼に対する脚本のありようといい、目を覆いたくなる。ほかに誰かいなかったのだろうか。いや、演出の問題を深刻視すべきだろうか。岡田将生徳永えり近野成美の3人はそれぞれの存在感のなかでうまく立ち振る舞っている。前半の徳永えりはすごくいい。なのに後半埋もれてしまうのがなんとも惜しい。
ところでこの作品は、たった8人、新入生と初心者だらけの吹奏楽部が、名門校のスパルタ指導とは別の方向で、音楽の楽しさを表現していく。音楽を取り巻くどろどろとした世界は、最近では『神童』や『ピアノの森』で描かれているが、それだけが音楽ではない。自由に、感じたままに、という姿勢はとても大事だし、音楽という扉を開けたときの第一歩なのだろう。『スウィングガールズ』で高校生たちが横断歩道を渡りながら「故郷の空」をスウィング調で口ずさむシーンなど、音楽の魅力を十分に表現していた。
その点、この作品ではインパクトあるシーンが見られなかっただけでなく、いくらスパルタへのアンチテーゼがあるにせよ、それなりの指導と練習が必要である。芹生は音楽の天才ではない。ならば彼らを見守る大人のなかに、音楽に詳しい者がいなければ、名門校を唸らせる演奏ができるはずがない。ラヴェルの「ボレロ」を、彼らはいつ練習していたのだろうか。丘の上で演奏するシーンは清清しい。あの場面だけいい。アレンジもいい。クライマックスで演奏されるボロディンの「韃靼人の踊り」も、高校生らしい選曲だ。