金返せ、交通費込みで 『ちーちゃんは悠久の向こう』

最近、ついていない。会社でたまるストレスのせいもあるが、それ以上にツキに見放されている感じがする。昨日の出来事だけでもずいぶんなものだ。
昨日は映画を2本観ると決め込んで、銭湯に行ってから東京に向かうことにした。そしたら、着替えとタオルを家に忘れてきた。なんとか貸しタオルで難を逃れ、最寄の劇場に向かったら、前売り券の指定劇場じゃなかった。あわてて渋谷に急行したら、2本中1本は、すでにその日の座席がすべて売り切れていた。あれですよ、あれ。テアトルもシネセゾン以外の劇場を使えよなあ。会員なのでインターネット予約できるのだが、先日登録しようとしたら、うまくいかない。いま帰宅していじってみたら、登録の画面だけ、推奨されているFirefoxが使えないらしいことが発覚。なぜそんな仕組みに。
そんなわけで、表題の1本しか観られなかったわけだが、これがまたとんでもない産物で。
ちーちゃん(仲里依紗)ともんちゃん(林遣都)は幼馴染。高校に入学して久しぶりに再会しても仲がいい。ちーちゃんが入ったオカルト研究会は、名ばかりの漫画好きの集まりだったが、学校の七不思議を記した古い資料が置かれていた。たちまち興味をもったちーちゃんはもんちゃんを引き連れて学校中を探検して回る。
これでも映画が成立してしまうんだなあと逆に感心してしまう。ストーリーはむちゃくちゃ、セットの設定も不自然で不完全、脚本にもカットにも無駄が多く、演出を施した形跡が皆無。去年80本あまりを鑑賞したが、「テレビ程度」の作品はあっても「テレビ以下」はなかった。本作のレベルの低さはここ数年でも群を抜いている。
監督は初めての作品のようだが、助監督としてさまざまな作品に参加している映画畑の人物だ。助監督のプロが監督のプロとは限らないということをまざまざと証明し、映画が監督の持ち物だということをあらためて認識させられた。脚本の山室有紀子をしてあの程度の作品しか作れないということが嘆かわしい。
先ほども書いたが、演出という作業があったとはとても思えない。それゆえ、出演陣がことごとく残酷である。堀部圭亮西田尚美の戸惑いを見てしまった気がする。林遣都も素材はよさそうなのだが、素材だけでは絵にならないらしい。そんななか仲里依紗だけは、あくまで本人の天真爛漫としたキャラクターが前面に出て、印象がいい。華がある。
やはり年始に観る作品というのは目に厳しい。せっかく渋谷に行ってこれか。金返せ、交通費込みで。帰りに途中下車して自棄酒をあおったのは言うまでもない。