高校生にお勧め、大人には・・・ 『リアル鬼ごっこ』

佐藤翼(石田卓也)が街で喧嘩に明け暮れるころ、世間では苗字が佐藤の人ばかりが怪死する事故や事件が相次いでいた。ある日、喧嘩相手のチンピラまがいに捕まってピンチのとき、翼は突然、似て非なる別世界にワープしてしまう。そこでは、佐藤さんの数を減らすという"王様"の命令のもと、リアル鬼ごっこが執行されていた。戸惑いながらも、翼は必死に逃げる。
すんごく馬鹿馬鹿しいけど、アイデア勝ちのストーリーだと思う。思わず映像にしたくなる原作なのだろう。ラスト、ハッピーエンドで終わりそうになったときに出現する新たな展開がいい。シリーズ化できるアイデアだ。この作品は、続編を作ってこそ価値を持つのではないか。
とはいえ、脚本も演出もいまいち。スピード感は大事だけれど、だからといって出演者を格闘家みたいにしなくてもいいし、とくに冒頭は無駄が多い。『バトル・ロワイアル』がいかによくできていたかがわかる。ディテールにどれだけリアルを持ち込めるかが臨場感にかかわってくるが、脚本で抜本的につくりかえる以外は、原作の力によるようだ。深作健太ならどう撮っただろうか。
出演では、谷村美月はいつも通りいい。とくに目新しさがないのは演出のせい。ただし1人3役状態で、いろんな姿を見られたので満足した。石田もいいけど、もっとシリアスさがほしいところ。そして柄本明がいい味を出している。あまり見ない役どころだけに、キャスティングの目利きのよさが窺える。
意外と後半は観ちゃう。そもそもの場面設定が複数あるので、セットやCG、衣装など多彩で、贅沢と言えば贅沢。それにしても劇場はすごい数の高校生! それこそまさに『バトル・ロワイアル』を思い出す光景だ。彼らには楽しいかもしれないけれど、将来的にいい映画ファンを作れる作品かというと、それは別の作品に委ねざるを得ないようである。