2008-01-01から1年間の記事一覧

ストイックであるが故の豊かな表現 『明日への遺言』

昭和20年5月、名古屋は米軍機による無差別爆撃により、多くの死傷者を出した。その際銃撃を受けた米軍機からは、幾人かのパイロットがパラシュートで降下し、日本軍に逮捕され、処刑された。それを指揮した岡田資(藤田まこと)をはじめとする東海軍の元軍人…

スクリーンに抜けるような青空を見た 『奈緒子』

喘息の治療のために家族でやってきた長崎県の波切島。小学生の奈緒子(藤本七海、上野樹里)は漁船に乗せてもらうが、海に転落し、助けられたが、代わりに船長が水死してしまう。あれから数年、高校生になった奈緒子は、船長の息子・雄介(三浦春馬)に再会…

丁寧な作品、だけどちょっと惜しい 『凍える鏡』

東京の公園で開かれるフリーマーケットで、青年(田中圭)は絵を描き、売っていた。彼の目は鋭く凶暴で、暴力的な態度に出ることもしばしばだった。ある日、通りかかった絵本作家の矢崎(渡辺美佐子)が彼の絵を認め、交流がはじまる。絵と彼の性格に心の闇…

そんなに僕を泣かせないでよ 『歓喜の歌』

田舎町にあるみたま文化会館で主任を務めるは飯塚正(小林薫)。春に異動で赴任して以来、適当でいい加減な毎日を過ごしている。口先だけは達者。それが災いして、あろうことか大晦日のママさんコーラスのコンサートをダブルブッキングしてしまう。部下にそ…

痛快なキャラクター勝負 『チーム・バチスタの栄光』

城東大学が誇る通称チーム・バチスタは、拡張性心筋症の手術で無敵の連戦連勝を重ねてきた。しかしある日を境に状況は一変。3連続の術死が発生する。執刀医の桐生(吉川晃司)は自ら原因調査を院長に依頼、その担当に、どういうわけか患者の愚痴聞きと名高い…

吉田拓郎で松竹のど真ん中を 『結婚しようよ』

「わたしは今日まで生きてみました/時にはだれかの力をかりて/時にはだれかにしがみついて/わたしは今日まで生きてみました/そして今 わたしは思っています/明日からも こうして生きて行くだろうと」*1 不動産屋の平凡なサラリーマン・卓(三宅裕司)は…

高校生にお勧め、大人には・・・ 『リアル鬼ごっこ』

佐藤翼(石田卓也)が街で喧嘩に明け暮れるころ、世間では苗字が佐藤の人ばかりが怪死する事故や事件が相次いでいた。ある日、喧嘩相手のチンピラまがいに捕まってピンチのとき、翼は突然、似て非なる別世界にワープしてしまう。そこでは、佐藤さんの数を減…

青春はブリ大根のように 『人のセックスを笑うな』

北関東のちょっとした街、開け放たれた広野の冬。美大に通うみるめ(松山ケンイチ)とえんちゃん(蒼井優)と堂本(忍成修吾)はいつもつるんで遊んでいる。ある朝方、3人が乗ったトラックはトンネルのなかで幽霊、いや幽霊のような女を目撃する。やがてそれ…

甘美な昭和懐古で終わらせない 『母べえ』

昭和15年、支那事変は泥沼化し、日本中が徐々に暗い影のなかに佇もうとしていた。東京の野上家にも心配事があった。ドイツ文学者の父べえ(坂東三津五郎)の著書が検閲を通らなくなった。ある2月の寒い日、父べえは特高に連行されてしまう。父べえの無事を祈…

百薬の長に陰りが

今日、昼休みに新聞を読んでいてはっとしてしまった。 寝酒にご用心!睡眠障害の恐れも 実はここの所、慢性的に体調が優れない。1週間以上になる。腹痛、軟便、食欲減衰、そして極度の眠気。慢性疲労とストレスが原因なのは知っているが、酒もしっかりと一翼…

なにかいいところはあったか 『KIDS』

そのなにもない街にアサト(小池徹平)はやってきた。タケオ(玉木宏)が彼を見つけたのは、ある食堂だった。テーブルにあった塩を超能力で手元に引き寄せていた。タケオは面白がってアサトを外に連れ出すが、そこで不良たちに絡まれる。一匹狼の荒くれ者の…

アイデアはいいが演出の調和に難あり 『音符と昆布』

もも(市川由衣)は家で留守番をしていた。音楽家の父親(宇崎竜童)が海外に出かけてしまったためだ。よくある話のはずが、その日だけは違っていた。呼び鈴が鳴るのでドアを開けると、かりん(池脇千鶴)と名乗る、不思議な言動の女性が立っていた。彼女は…

小津+ギャグ+ダメ人間= 『全然大丈夫』

古本屋の息子・照男(荒川良々)は植木屋に勤めてはいるが、30歳を目前にしてなおふらふらしていてだらしなく、ホラー趣味で他人を怖がらせることだけに執念を燃やしている。一方、友達の小森(岡田義徳)は病院清掃の管理者として真面目にこつこつ働く。照…

お定まりを抜け出せない 『テラビシアにかける橋』

ジェスの家は6人家族、周囲の家々に比べれば、かなり切り詰めた生活をしている。そのせいなのか、学校では虐められている。ある日、転校生がやってきた。レスリーという快活な女の子だが、はっきりと主張するがゆえに周囲と馴染めず、なんとなくジェスと似た…

もうひとつの大阪物語 『子猫の涙』

昭和43年、メキシコオリンピック。ボクシングで銅メダルを獲得した森岡栄治(武田真治)は、その後プロに転向するも成績芳しくなく、引退してからは無職でぶらぶらしていた。夜遊びと女癖が災いし、ひとり家計を支えるお母ちゃん(紺野まひる)の怒号が絶え…

早く帰宅できた夜は

間違いなくしんどい一日になるだろうと腹をくくって(くくらなくても結果は同じなんだけど)会社に行ったら、案外そうでもなかった。翌日にスライドしただけだったりして。まあいい。ひさしぶりに早い時間に帰宅できたのだから。近所のガソリンスタンドで灯…

金返せ、交通費込みで 『ちーちゃんは悠久の向こう』

最近、ついていない。会社でたまるストレスのせいもあるが、それ以上にツキに見放されている感じがする。昨日の出来事だけでもずいぶんなものだ。 昨日は映画を2本観ると決め込んで、銭湯に行ってから東京に向かうことにした。そしたら、着替えとタオルを家…

痛飲サタデー

だいたい毎日酒を飲んでいる。多分最近の休肝日は、高熱にうなされた1ヶ月前で、その前となると、いったいいつのことか思い出せない。そんな感じで過ごしている。飲兵衛の血統だから仕方ないと思っているけど、脳みそは大分小さくなったかしら。 さて、1日前…

話はかわって、いや戻って

数年ぶりに年越しを自宅以外で過ごした。今回は、初めての場所、横浜である。元旦の帰省となったため、カウントダウンのなにかを探していた。偶然ではあるが、年越しのジルベスターコンサートのチケットが横浜しか残っていなかったもので、飛び込んだ。監督…

初詣しそこなりしは

帰省したことが言い訳になるかどうか、我が家のキーボードがやけにタイピングしづらい。学生時代からの愛用品のパンタグラフ式だというのに。 札幌は寒かった。雪が少ない分、余計にそう感じたのだろうか。年末年始の札幌というと、雪がしんしんと降るもので…

鉛色の月曜

今朝はしんどかった。この数日、夜更かしの朝寝坊をひたすら繰り返していたことと、帰省先でたらふくの食事に見舞われたこととで、幸せな体調の崩し方をしていた。そもそも仕事をしたくない身にとって、泣きっ面に蜂的事態なのだ。少なくとも半日は死んでた…

今年も勝手に映画大賞2007

昨年大晦日の産経で佐伯啓思氏が述べるところによると、現代を表す言葉はニヒリズムなのだそうだ。「これまで自明なものとして信じられてきた諸価値の崩壊」の結果、「ある者は瞬時の刺激や快楽を求める刹那的快楽主義に走り、ある物は、所詮何をしても無意…

演出力の高さが総合力にならなかったのが惜しい 『風の外側』

(今回もあらすじを省いた簡潔な感想で) あらためて感心するのは、奥田瑛二監督の演出力の高さである。そもそも、江原啓之と綾戸智絵をキャスティングした眼力がすごいのだが、彼らが芸暦の長いバイプレイヤーにしか見えない。綾戸にいたっては、エンドロー…

あけましておめでとうございます

今年もきっと細々と更新し続けると思いますので、よろしければお付き合いください。とりあえず数日間は、旧年中にたまりにたまった疲労を取ります。