痛快なキャラクター勝負 『チーム・バチスタの栄光』

城東大学が誇る通称チーム・バチスタは、拡張性心筋症の手術で無敵の連戦連勝を重ねてきた。しかしある日を境に状況は一変。3連続の術死が発生する。執刀医の桐生(吉川晃司)は自ら原因調査を院長に依頼、その担当に、どういうわけか患者の愚痴聞きと名高い不定愁訴外来の田口(竹内結子)が就いてしまう。結果的に原因不明で調査を終えようとしていた田口のもとに、厚生労働省から白鳥という男(阿部寛)がやってきて、調査のやり直しを宣言してしまう。
製作が電通とTBSという、テレビドラマと違いますかと言わんばかりの体制で、テレビ寸前の芸当をやってのける。ただしミステリーといえどもスリルや推理を楽しむことを端から捨てているので、観客もなんとか腐らずにいられる。なんといっても中村義洋監督だ。彼の作品として、ストーリーを転がすためには、説明過多の強引さは必要条件なのだろう。(原作を読まない身としては)最後の最後まで犯人が分からず、なのに白鳥の計画通りに着々と解決されてしまう歯痒さが、なんとも中村作品らしい痛快さなのだ。だけど今回は監督が脚本を書いていないんだなあ。んー。
余談になるが、ほかの監督が担当していたら、まったく違うテイストになっていた。佐々部清監督『半落ち』や長澤雅彦監督『13階段』を思い出しているのだけれど、彼らなら、犯人が犯行に至るまでの長い経緯を丁寧に描くか、更なる犯行を防ぐスリリングな展開を持ち込むかするだろう。しかし密室というシチュエーションでパズルのように事件を解き明かすには、湿った手法がかえって仇になるかもしれない。
その点、医療の現実とか家族とかいう側面をすべて切って、前半のかなり早いうちから、登場人物のキャラクターをカテゴライズしていきますよという演出が宣言される割り切りは、この手のストーリーではすっきりしている。コミカルな脚本が活き活きとしてくる。個人的に好きな手法とはいえないけれど、理解したいと思う。
キャラクター勝負の作品を支えたのは、監督の演出と、それに応えた出演者たちにほかならない。竹内結子にはメロメロだ。抜け作役なんて初めて見たけれど、一瞬で納得してしまう。あの上の前歯がこんなに可愛く映った作品はない。去年もすばらしかったが、今年はそれを上回りそうな勢いだ。アタクシと年齢が半年しか違わないのに、この卓越した感じはなんなんだ。
それから阿部寛も、彼にしかできない怪物を見事に演じている。白鳥を白鳥らしく演技できる世界一の男だと思う。あるいは、吉川晃司もすごい。彼の出演作を見るのはこれが3作目だけれど、圧倒的にこれがいい。こんなにすばらしい役者だとは知らなかった。ほかを挙げれば切りがないが、院長の國村隼も、チーム・バチスタ池内博之佐野史郎田中直樹、その患者の山口良一、田口の患者の上田耕一ほかの面々も。
ストレスも吹っ飛んで、スカーッとさせていただいた。心臓のリアルさもすごい。