開き直ったテレビ的作品の清々しさ 『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』

栃木県のとある田園都市。不良と呼ぶにはあどけない、いたずら好きの高校生たちがいた。ある日、そんな彼らに完全と立ちはだかる壁が現れた。駐在さん(佐々木蔵之介)は西条(石田卓也)のスピード違反を取り締まったことをきっかけに、彼らは駐在さん相手のいたずらを決行。ママチャリ(市原隼人)のアイデアによる数々のいたずらに、やがて駐在さんも反撃を開始する。
テレビ製作陣による映画とあって、作風は至ってテレビ的である。なぜテレビドラマにしなかったのか問いたくなるほど。開き直っているのが逆に清々しいほど。しかし作品の分かりやすさといい、コミカルな編集といい、腹をよじらせて笑っちゃう展開の連続といい、「映画の面白さ」より「みんなで見る楽しさ」に対する印象がいい。
脚本も面白いが、それ以上に演出がいい。そしてそれに応えたキャスティングいい。リーダーがいて、利かん坊がいて、大家族がいて、デブがいて、チビがいて、秀才がいる。市原隼人の北関東弁かどうか怪しいイントネーションが作品の雰囲気にあっている。コメディスターでありながら、『虹の女神』のような叙情的な演技もできる。いつも思うが、侮れない。冨浦智嗣はハマリすぎている。"その手の"役ばかり増えてしまわないか心配になる。
脇役も実に心憎い。市原と倉科カナのやり取りは何度観ても楽しいし、竹中直人を出す前座だけで掟ポルシェをもってくるアイデアも狂っている。ほかにも志賀廣太郎森崎博之、子役の成嶋こと里など、その役柄における危なっかしさがまるでない。豊田エリーだけがなんとなくぐらついているのだが、それは監督が狙ってそうしたとしか思えない。彼女にほかの作品で好演しろといっても、果たしてどうか。安藤玉恵が相変わらずビックリ箱の中身みたいに出演している。
最後に敢えて苦言を書くならば、春休み前の公開にしていただきたかった。この作品は高校生がこぞって観るに相応しい。家族で寅さんを観るように、仲間と観て、ゲラゲラ笑うほうがいい。もし続編があるのなら、製作会社はぜひ考慮を。