ポップなフランス時代劇、英語だけど 『マリー・アントワネット』

久しぶりの洋画は、フランス最後の王妃マリー・アントワネットの半生を描いた作品。オーストリアからフランスに嫁ぎ、革命のためベルサイユから逃亡するまでが表現されている。監督はソフィア・コッポラ、主演はキルスティン・ダンスト
期待通りのポップな仕上がりに満足している。冒頭からいきなりエレキギターだからな。仮面舞踏会の音楽もロックンロール。そうやって音楽の多くが現代のもので構成されている。そしてそのテンポにあわせて、さまざまな「カワイイ」がスクリーンを賑わす。ドレス、靴、宝飾品、ケーキ、キャンディ、賭博のチップ(ピンク!)。
いまにして思えば、コッポラ監督に求めているものの多くがそこに集約されている気がする。現代的な見せ方で作品が進行していくわりには、時代劇としての風合いが一向に消えないあたりが、力量といったところだろうか。大きな作品になると途端にずっこける監督を何人も見てきたように思うけれど、さすが大物なのだろう。テイストは違うけれど、北野版座頭市を思い出した。
とはいえ、全体として、マリー・アントワネットの意思や感情といったもの、歴史的背景についてはかなり端折られている。辛くいえば、その部分に不満と歴史の無知への僕の反省がある。とくに王室に陰りが見えたころからの流れは急ピッチだ。オペラ鑑賞や絵画の交換でエッセンスを表現して、流れを崩さないような工夫したのは分かるけれど、機能的過ぎて、なにを見せたかったのかよく分からない。
でもべつにいい。前述のとおり、新鮮なものを観られたからだ。そしてキルスティン・ダンストはかわいい。冒頭の場面はおよそ14歳には見えないけれど、どんどん大人になっていく様子がすごくよく分かった。一種の青春群像劇と見たほうがよいのだろうか。