年明けからトホホ映画か 『僕は妹に恋をする』

いきなりですが、あらすじを書くようなこともないです。双子の兄と妹がひたすらいちゃつくんです。そして、ふたりの秘密を知る数少ないクラスメートが、その関係を壊そうとしたり応援したり、いずれ本気でふたりのことを考えてかいがいしいつもりなんです。ふたりの心中は常に穏やかでない。散々苦悩した末に結婚できないんだということで悔しがるので、ああこれで終わるんだと思ったら、またいちゃつくんです。
いま記録がないので断言しませんが、年始に観る映画に当たりが少ないように思います。去年『ギミー・ヘブン』を見た後の憤りを忘れません。しかし、その衝撃をはるかに上回るトホホ映画の登場です。あまりに退屈なので、受付でもらったチラシを、スクリーンの明かりで眺めていましたよ。ひととおり読み終えてもまだ展開を追えるというのはいかがなものか。
安藤尋監督の作品は初めてでしたが、そもそも映画というものの考え方が、きっと僕とはずいぶん違うんだという感触があります。全体的に無機質で抽象的で、叙情的といえばずいぶん聞こえはいいですが、安っぽいのでバタ臭い映像と脚本を作るようです。演出にどの程度興味があるかわかりませんが、長編よりも短編、音楽ビデオのようなもので見たい監督ですね。
べつに主人公に感情移入することがいいことだとは思いませんが、スクリーンとの一体化を図る(あるいは決別する)には、世間の臭いをある程度抽入しながら作られる必要があります。たとえば、出てきた食事がハンバーグとカレーというのは、わざとらしさを通り越して、ニュータウンの悲哀を連想させます。それは監督の意図ではないはずです。そうやってすべてのキャラクターが胡散臭くなっていくなか、教師役の諏訪太郎がもっともスクリーンで対話可能だというのが、なんとも薄ら寒いです。
そんなわけで、随所に(意図されない)笑う箇所が散りばめられた作品でした。終盤、シリアスになればなるほど腹を抱えて笑いたくなります。そして断然気になるのは榮倉奈々です。作品のなかでは彼女もまたトホホなのですが、しかし機微の表現に感心する場面が散見されます。もしかするととても冷静に作品と向き合っていて、全力でトホホ感を作り上げていたのではないかと考えさせられます。あざとい。反則級の笑顔の持ち主です。