頼みもせんのに

日曜日に購入した『大阪物語』(拙いながらもWikipediaに項目あり)。自分自身は掘り出しもんを見つけた気分でいます。そもそも新品定価で16,000円というセルを想定していない設定ですが、いくらレンタル屋から流れたきたとはいえ、それがたったの380円というのは、まあ価値の分からん人もいるというものです。
さっそく、たぶん6年ぶりぐらいに観ました(公開は99年)。その後の市川作品をあれこれ観たあとにこの作品を観ると、そこここに表現の原石のようなものが隠れていて、当時とは違う感動がありました。小林達比古の画像の揺れであったり、大阪の長屋の風景であったり、役者にカメラ目線で言わせる台詞だったり。それらがのちに、『ざわざわ下北沢』『東京マリーゴールド』『トニー滝谷』『ジョゼと虎と魚たち』に進化していったのでしょう。
言わずもがな、池脇千鶴のデビュー作です。いやはやあのかわいさったらない。最近は妙に板についた演技の新人がいろいろいますけど、あの素人とも玄人ともつかない独特の雰囲気は、ちょっとやそこらでつくられるものではない。本人はもちろん凄いんだけど、その凄さに気付いた監督がまた凄い。
「よう来てくれはりましたなあ、頼みもせんのに」
劇中の夫婦漫才の名文句です。僕が日本映画をこれほど観るようになったきっかけの1本。スタッフにしろ、キャストにしろ、ほんとによくやって来たもんです。頼みもせんのに。
あとついでに。犬童一心が作品に出演してました! どっかで見た顔だなあと思ったら。