冷や汗が出る夏向き作品 『タイヨウのうた』

がはははははははは(冒頭から失敬)。なんだかすごい映画を観ちゃいましたよ。ヒットしているというからどんなものかと思ったら、今年最大の天然B級ではないですか。爆笑的作品なのに、横の男が目頭を抑えてましたよ。って、言いすぎでしょうか。
かつておすぎは、男性の俳優にはどうしても甘くなる、と発言していました。それを言うなら僕は女性に甘いのだけれど、主演したYUIのすごさときたら、憎むに憎めない。いまどきいるんだなあと感心するほどの不器用な演技に、僕の身体は捩れ、顔を手で覆って叫びそうになりました。これは演技だろうか、いやあプライベートもおんなじではなどと、いらぬ想像力を働かされてしまいます。
最大のポイントは、なんといってもYUIの顔です。そこまで表情筋を押し殺さなくても、という指摘はさておくとして、ものすごく役者顔なんですね、このかたは。おはようからおやすみまで、完璧なメイクとしか思えない顔です。こればっかりはどうしようもないのか、それとも意図があったのか。いつかこういう感覚があったなあと思ったら、大嵐浩太郎のコントでした。
いまさら取り繕うというのも変な話ですが、べつに作品およびYUIを批判しているのではございません。B級だとは思いますが、十分愉しみましたから。ものすごくベタだと思いましたが、YUIを観に来たと思えばどうってことないですから。そもそも、それらを承知のうえで観るものだと思いますから。みんなで萌え萌えになっちゃえばいいんです。
さて、付け足しのように書きますと、共演の塚本高史がたいへんすばらしい。彼には寅さんの臭いがあります。YUIの演技とほかのプロたちの演技をうまく橋渡しする、そのバランスのよさも魅力です。結局、男性でも女性でも楽しめちゃう要素に溢れているという意味で、秀作といえるのでしょうか。これ以上なにも言うまい。