目利きどおりの駄作 『チェケラッチョ!!』

予告編で予感できたのだから、じゃ見るなよ、という話でしょうか。たまたま遠方から友人がみえてね、貧乏だったのでなんのもてなしもできなかったのですが、この作品を観たいということで、ついていったわけです。いや彼を非難しているのではないのです。どんな作品にも収穫はある。と黒澤明だって思っていたはず。
ではせっかくだからそこから書きましょう。ちょうど酔っ払ってきたところですし。
今回の収穫は、なんといっても井上真央でした。僕はテレビドラマをほとんど見ないので、いままで彼女がどういう演技をするのか、まったく知らなかったのですね。正直申し上げまして、演技力に幅があるとは思いませんでしたが、それだけが評価ではありません。原節子に対する小津安二郎の評価だって同じです。
むしろ雰囲気や安定感のほうが大切なときもあります。彼女には、強いそれがありました。いま日本で近い存在はいないかもしれませんね。逆に言えば、日本で評価される日はまだ遠いとも。チョン・ジヒョンを思い出しました。そして、あのぷにっとしたほっぺたに非常に満足しております。言いたかったのは、そこだな。あのほっぺたに1,500円。やみつきになるかわいさだ。
さて、あとは厳しいです。フジテレビは過去にたくさんのヒット作をつくって、実際に面白い作品もあったと思うのですが、今回はいったいどうしちゃったというのでしょう。この作品をつくるに至った経緯を、亀山千広に聞いてみたいぐらいです。なにがきっかけだったのと。
僕としては、また沖縄かー、と呆れるところからはじまっているのですね。沖縄で撮ればなにか作れるという「沖縄病」があると信じてやまないのですが、この作品はまさにそれを患っています。沖縄である必然性ゼロ。東京は無理でも、東北や四国だってよかったはずです。マーケティングの世界からすれば、沖縄の理由をオレンジレンジに求めたいところでしょうが、映画の世界ではナンセンス。だよね。
しかしストーリーがよければ言うことなし、なのですが、ここまで脚本が悪いとは。近年稀に見ます。無駄が多すぎる。編集で80分にできますよ。そうすればテンポも出てくるだろうし。途中のKONISHIKIのラップのシーンと、ラストの海に飛び込んだふたりがけんかするシーンはよかったですよ。あのテンポですよ。ラップのミュージカル映画でもよかったぐらい。ほんと、井上真央がいないシーンは、スクリーンのどこを観ていれば楽しかったのか。キャストに不満はないのになあ。
監督もドラマが非常に長い方のようですね。映画ってテレビと違う、と思う。ここに自信がないのですが、そのことについて、映画を通して説明してほしかったところです。映画って難しいよなあ。