ちょっぴりビターでかなり半端な結末はお誂え向き? 『ダンサーの純情』

5ヶ月ぶりの外国映画です。べつに避けているわけではないのですが、どうしても興味の対象が日本の作品に集中してしまうのです。しかし、ムン・グニョン主演とあっては、観ないわけにもいくまい。
韓国最高のダンストレーナーだが、ダンス協会会長の御曹司の策略で怪我を負わされすっかり腐っていたヨンセ(パク・コニョン)だが、先輩の紹介をしぶしぶ受け入れ、中国からやって来る朝鮮族の女性を新たなパートナーにして再出発することになる。と思ったら、やってきたのはなぜかその妹・チョリン(ムン・グニョン)。ダンスは完全に素人。見るに見かねたヨンセが手取り足取りダンスを教えていく。しかし、またもや新たな罠が。
この作品は、ムン・グニョンの演技とダンスに尽きます。すごい、ようやった。不器用さや田舎臭さ全開の少女から、洗練されたダンサーの表情へ。どういう順番に撮影していったのかは分かりませんが、少しずつ成長していく様が的確に表現されていて、ドキュメンタリーでも見ているように感心してしまいます。そして、コメディエンヌなんだよねえ。
なので、レッスンシーンの多い前半はかなり楽しめました。しかし、脚本がよくないせいで、後半がえらいことになっています。不遇の結末そのものを避難するつもりはありませんが、誰だって期待していた大会のシーンまで不遇にすることはなかろうに。チョリンとヨンセのペアがまともに踊っているシーンが、なんとエンドロールのイメージ映像になるまで登場しません。
そして、最後はくっつくのか離れるのかよく分からないままです(離れたのでしょうが)。あの曖昧さというのはいったいなんだろう。
と考えたとき、もはやこれは脚本の問題にとどまらず、ムン・グニョンを取り巻く環境がそうさせたのではないかと思い至るのです。彼女がまだ未成年だということで、ベッドシーンはおろか、キスシーンもありません。きっと韓国ではそういうものなのでしょう、あわやベッドシーンか、という場面をわざわざ作って笑いをとろうとします。しかも、ヨンセと契りを交わすはずの結末も用意しがたいし、逆に、中国に送還するという結末も、「国民の妹」と称される彼女にはふさわしくない、ということなのでしょう。
なんて使いづらい俳優なんだ。しかし彼女の演技力は魅力がありますし、是非これからも活躍していただきたい、のですが、いまは勉学が忙しいのでほぼ休業中のようですね。彼女で『鉄道員』のリメイクをやるとおもしろいだろうなあ。