きれいなだけじゃだめかしら 『三年身籠る』

ここにきて狂ったように映画を観ているのは、ほかでもない。新宿の金券ショップで鑑賞券を購入した際に、「今月までです」といわれたのをまったく気にせずにいたのですが、2月って明日までじゃないですか。2枚も購入するんじゃなかったですよ。お陰さまで新宿2往復で3本です。
そんなわけで半ばやっつけ仕事のように(なにせ列車を乗り過ごして池袋から折り返したぐらいですから)観てまいりました。でも、観ておいてよかったと思いますよ。なかなか面白いとは思いましたよ。それが魅力的かといわれれば、ちょっと違うけれど。
さすがといいますか、映像にしても脚本にしても、うまいもんだと思いますよ。教科書のように整った、いいシーンの連続です。エンドロールに小林達比古の名前がありましたが、なるほどうなずけます。これほど整ったものを頑固に作れるというのは、ある意味で贅沢だよなあと。冒頭の朝靄の一本道、墓地の石段、日本家屋、どれもいつかどこかで観たことあると思わされます。
ただ、それでいいものかどうかという疑問がどうにも消えません。もっともこの作品はファンタジーの一種と捉えていいのだろうから、全体がやけに古めかしい雰囲気になっているのも、表現のためのものといえるでしょうが、それにしても、あまりにもリアリティが欠けてやしないだろうか。いや、それがいけないというわけではないし、女性の視点での風刺めいたものもあって、完成度は高いと思うのだけれど。
できればもう少しゆがみを仕掛けて、そこにスパイスを効かせていただきたかった。後半、山ごもりのシーンからは、そのゆがみが出てきてストーリーに少し深みが出てきました。それっくらいでいいのでは。
女性出演者ばかりのなか、西島秀俊塩見三省の奮闘が印象的でした。