面白くて面白くなくて、面白い 『イヌゴエ』

いまのところ、日本中で渋谷シネ・ラ・セットでしか上映されていないため、どう転んでも混雑するという興行状態となっているこの作品ですが、しかしほかに観るものがないわけでもあるまい。やはり人間、動物にはほんのこつ弱いということなのでしょう。それも、とてつもなく可愛いか、とてつもなく不細工かの、どちらか。
作品中に登場する「ペス」は明らかに後者。これをブス可愛いというのでしょうが、そう言っていられるのは、そいつが黙っているときだけの話。孤独感と悲壮感を兼ね備えた低音で「ごっつ飯喰いたい」「あのメスの匂いや」「とことんやったる」などと、憎たらしいときたらありません。そして、悔しいかな、ベタなのに笑ってしまうのです。そして意外ながらも納得のオチがつきます。
動物がしゃべる映画は数あれど、これほど貧乏臭い作品を観たことがありません。それから、これほど演技らしい演技をしない犬もなかなかいません。そこに、おそらく後付けで台詞を考えているのでしょう。まわりもべつに犬の演技に付き合うふうでもないので、どちらかというとペスは人間の役者に近いのかもしれません。飼い犬は自分が犬だという自覚がないといいますから、ある意味でリアルです。
作品そのものは、きっと恐ろしいほどに低予算だろうと思います。でもキャストは抑えるところを抑えているし、強引で不可解な点は多々あっても、まあこの予算なら許せるだろうという程度です。それって褒めているのでしょうか。褒めてないこともない、という感じです。もうすこし、いい構図のカットがあってほしかったのと、もう少し音楽を使ってほしかったというのはあります。
すいません、眠くて文章をまともに書けなくなってきました。最後に、主演の山本浩司はさすがの存在感です。イヌゴエの遠藤憲一にしてもそうですが、やっぱりキャスティングは優れてるなあ。はい、以上です。