ふたりの格闘シーンは見事 『東京ゾンビ』

佐藤佐吉の長編初監督作、というのが非常に意外なんですよね。どうもこの人には、神出鬼没なイメージがあります。しかしさすが、慣れたものというか、カットの作り方とか演出とか、うまいよなあと思いながら観ました。あとは浅野忠信の演技のよさですよ。あそこまで役にハマるとは。彼で作品がもっているといっても過言でないほどです。
最後の格闘シーンも、迫真の演技でかなり驚かされます。たいてい格闘技の映画では、試合のシーンがあっても、いかにもやっているような感じで撮るという、撮影と編集の強力タッグがつきものですが、今回は本気でやってる。観ていて、試合として面白いと思ったのは、『反則王』のソン・ガンホ以来です。
ストーリーはあってないようなものですが、不条理世界をかなり楽しめましたよ。重大な告白をする哀川翔に笑い、楳図かずおの不気味さにまた笑い、黒富士をはじめとするCGのお見事さに感心します。いまさらになって、あの役は高樹マリアだったのかとか、谷村美月だったのかとか、唸ってます。
ただ、正直なところ、中だるみしてる。後半はしばらく浅野のシーンばかりが続きますが、そこはもっとテンポよく進んでよかったし、それ以上に、罵倒台詞が多すぎます。映画なんだから、そこまで「バカ」を連発しなくても、罵倒していることぐらい分かる。あの口喧嘩は本当に必要なシーンなんだろか。脚本家佐藤佐吉として、いかがなものだろうか。