秋の東京五番勝負 後半

さあ、今日は六本木ヒルズです。上映と上映のあいだの暇つぶしができない!

豪華出演者で乗り切った『寝ずの番』

監督のマキノ雅彦って誰かと思ったら、津川雅彦のことなんですね。ある落語家の通夜の晩、ろうそくの火を絶やしてはならないと寝ずの番をする弟子たちが、思い出話を次々に展開します。しかし、事態はそれだけにはとどまらなかった。
正直なところ、ストーリーとしては前半に盛り上がってしまって、あとはちょっとだるいのですけど、そこは役者陣が見事に乗り切りました。その役者の豪華さが半端ない。長門裕之中井貴一笹野高史岸部一徳、木下ほうか、富司純子木村佳乃堺正章ほかストーリー上ちょっと明かせないようなすごい人たちが次々と出演します。たった数秒しか出てこない主役級が何人かいます。彼らの名演技が、見ていて実に楽しい。
なかでもすごかったのが、長門裕之木村佳乃。映画が始まって数分で死んじゃうのに、死んだままずーっと出演し続けます。回想シーンではなくて、あくまで遺体。あんなに長時間遺体になったことって、さすがにないでしょうなあ。その死にっぷり(!)がたまりません。僕も含めて観客がケタケタ笑ってましたよ。
そして木村佳乃がね、ほんとビックリしちゃったんですよ。あれ、あんなにいい役者だったかしらと。こんなふうに書くと失礼な感じがしますけど、ほかの役者とやり合っても違和感がない。いや、むしろ勝ってる。
久し振りに安定感抜群の日本映画を観ました。さすがマキノ一門です。

それは、電車男よりも勇ましく 『落第』

チリの映画って初めて観ました。南米の作品を大量に見ていると、そのうちお国柄が見えるようになるのでしょうか。そういえば去年のグランプリはウルグアイ映画でしたね。今年の春にスペインで映画を見たのですけど、やったら台詞が多くて、みんな喋る喋る。今回の作品は、それに近いテンポでした。
まさにチリ版電車男とも言うべき作品です。学園ドラマなんですが、どこにでもいるような、絶対にモテないのはもちろんのこと、男子からも邪険に扱われるという、どう考えても学園生活を楽しんでいない青年が主人公。こういう人物には必ず同類の友人がいて、ぶっちゃけて言うと、そういう仲間しかいない。僕もなんとなく同種のニオイを感じちゃって、映画の構図云々など、すごく考えづらい。
彼のお目当ては、ついにやってきた美人の転校生。当然のようにクラスのイケメンに持っていかれてしまうのですが、そこはラテンの血なのか、猛烈なアタックを始めます。やっぱり学園モノだけあって、若さの強みと危うさが作品をグッと面白くしてます。
主人公が漫画化志望のコミックオタクだということで、カットが時折スケッチ風にデフォルメされて、さらにコミックのコマの一部になります。わりとこういった手法は韓国の作品で見るように思っていたのですが、チリでも一般的にこんな斬新な手法を見ることができるのでしょうか。
あの、正直なところ、特段ここがすごいなどという部分がなくて、どうしてコンペティションなのか謎ではあります。ただ、もしも電車男を意識してセレクトされたのであれば、いったんどれだけの作品のなかから選び抜いたのだろうかと。その仕事、してみたい。