『妖怪大戦争』は今年ナンバーワン候補

どうしてこの作品を見ようと思ったのかということを考えると、たぶんほとんど答えが出ないと思うのだけれど、少なくとも、ふだん絶対にホラーを見ない僕に、見せた力があったというのは事実でしょう。実際、これはすごいものを観ちゃったなという印象です。
もう、あのイマジネーションとか構想力とか、三池崇史ってなに考えてるんだろうと思いますよ、ほんと。なにもかもが絶妙なんですよね。そして役者陣がまた半端ない。あれだけ豪華なのに(言わないでおきますが)、特殊メイクでほとんど認識不可能なうえ、アフレコですからね。演技もいいですよ。贅沢にもほどがあるだろ。
この作品をすごいなあと思うひとつには、子供の映画でもあり、大人の映画でもあるところ。こんなに見事に両立するものなのかと、本当に感心します。夏休み映画を制した、といっても過言でないでしょう。ああ娯楽映画ってこれだよなあ、と感じる名作です。
(追記)作品の内容にまるで触れていなかったですね。3000人のエキストラを使って120万の妖怪を表現したそうなのですが、彼ら、ほとんど他人とは思えません。
人間を滅ぼそうとする勢力の言い分はあるし、それに妖怪が立ち向かう動機もあるのだけれど、そもそも人間はまるで立場がないし、たぶんものすごい数の犠牲が出てる。そして妖怪にしても、真剣に悪に立ち向かおうとするものは少数で、あとは完全にマイペース。
実はこの妖怪たちは、われわれ実際の人間を表現していて、その姿が風刺的で、ついつい共感してしまいます。そしてつくづく、この国は、なんて戦争をするのに向いていない国なんだろうと思います。意外と奥深いです。