曇天模様の夏の夕暮れ、『リンダリンダリンダ』

青春映画ってものすごくたくさんあって、もういい加減撮り尽くしたけど、手を変え品を変え作りつづけてきた、という印象があります。それでも必然的に役者たちが若く、初々しい演技を見せてくれるものだから、こちらもついついのめりこんでしまって、感動させられてしまう、という構図が、なかなか憎いものです。
しかし、山下敦弘監督に青春映画を撮らせると、趣がまるで変わってくるので、危険極まりない。ひとまず、この作品で山下ワールドを初めて目撃してしまった人の感想を聞いてみたい気分です。おそらく、予習してから劇場に出かけるのが正解でしょうね。
もうなんと言っていいのかよく分かりません。山下ワールドのイライラしたリアリティは存分にあるけれども、でもそれを体現するのは女子高生だし、彼女たちは真面目だし、感動するにはするけれども、やっぱり山下ワールドだし。
でも、青春って、実はとっても暗くて、切なくて、ダラダラしている。曇りの日の夕暮れ、あの暗闇の差し迫る直前の不安な感じ。それも夏。この世界はいつ終わってしまうんだろうなんて、ほとんど考えても意味のないようなことで、勝手に落ち込んでしまう。
劇中に登場するバンド「パーランマウム」のメンバーも、自分がどうしてバンドをやっているか説明できないし、どうして学園祭の出場をキャンセルしなかったのか、説明できないと思うのです。とりあえず、仲間と一緒にいる理由がなくなることが寂しい。理由はもうそれで十分だし、それ以外にはあり得ないのです。
どうやら原案では韓国人が主役をやることにはなっていなかったようですが、ペ・ドゥナが主演でなかったら、もっと作品に勢いを求められるし、出演者に主体性を求められたはずです。異国からやって来て、あの怪演をやってくれたからこそ、ダラダラしていても作品として成立できた。その功績は大きいようです。
とはいえ、山下監督の表現力としては、今回はかなり背伸びをした感じが否めません。いつか、すごーく長い目で見たときに、あのときあんな作品を撮った経験が活かされている、などと評価される一作になるはずです。