『いぬのえいが』は利口な作品

周回遅れの観がありますが、いまはまだ、手の届きそうな範囲で作品を観続けることに必死な状態です。この先も、遅ればせの作品が続くと思いますよ。
さて。この作品に関しては、「宮崎あおいが出演している」「近くの映画館で観られる」というふたつの理由だけでしたので、要するに大して期待していなかったのですね。ちょっと理屈っぽく書くと、僕はショートムービーの類のよさをあまり理解できておらず、どうせ奇抜なアイデアのコンテストみたいなものだろうというぐらいにしか思っておりません。例えばそれをテレビ番組として作成するならレベルが高いかもしれないけれど、お金を払ってまで観るのには抵抗があるのです。食わず嫌いの可能性を否定しませんが。
その点、この作品はよくできていたと思います。テーマがしっかりしていたのももちろんですが、全体の構成を、各小作品のぶつ切りにしなかったのがいいですね。監督の多くはCM出身ですので、短い時間で情報をまとめることには長けていると思いますが、しかし全体としては1時間を越える作品にしなければならない。そのあたりのフォローは、犬童一心佐藤信介のような映画組がしていったのかなと、勝手に想像しています。
一言では、お利口さんな映画ですね。短い時間でしっかり笑いを取って、途中で居眠りしても大丈夫。テレビでお馴染みの俳優たちを多用しているので、映画が苦手な人でも飽きない。そして最後にはしっかりお涙を頂戴する。観客は、まるでベルトコンベアーに乗せられたかのように、感情の既定路線にはめられる。ずるい。でも、大衆が求めているものって、そんなものかもしれない。
僕もついつい、最後の小作品に涙腺が緩みました。短時間で見せる芝居のキャスティングとして、宮崎あおいは最高です。「映える」んですよね。デートのような、きっかけのツールに映画館を使いたい方に最適な作品です。そういう映画の使い方って、とても大事だと思う。