「ラブドガン」を観終わったときのあの充実感が堪らん

ようやっとこの作品の感想が書けます。しかし、本当に書けるのか。
一言では、殺し屋の映画です。組長を殺した殺し屋を、殺し屋が殺しに行くまで。そしてそこに、両親を失った少女が生きようとするまでや、チンピラが一人前の殺し屋に成長していくまでの過程を重ねています。実は、こうして粗筋を書いているうちに、僕自身がああそうだったのかと気付きます。そのくらい、内容の説明が困難な作品ではあります。監督もそう言ってますし。
上を読むと一見単純そうなストーリーですが、これでもかというぐらいに様々なストーリーが詰め込まれています。それでいて、出演者はさほど多くない。さらに映像に様々なエフェクトがかけられていたり、非現実的な設定のシーンがあったり、これ、普通は混乱して作品が成立しないはずです。しかし、驚くほどスマートに、かつスムーズに、さらにはちょっとコミカルにストーリーが纏め上げられています。これはすごいの一言です。原作から監督までを務めた渡辺謙作の驚異的な力を感じます。
重要なキーワードは色です。「銃弾は撃つ人間の感情によってその色を変える」という設定がとても面白い。出だしからいきなり薄っすら青くエフェクトされた海沿いの映像。青いシャツの宮崎あおいは葡萄を頬張り、海を眺める。流血して倒れた永瀬正敏も、同じく葡萄にかぶりつく。青は悲しみの色。ほかに、怯えの黄、憎しみの黒が登場します。そして最終的には赤が重要な色となります。永瀬の銃は真っ赤。そして赤い銃弾。
ストーリーを映像に語らせるとでも言うべきか。これは本来的には映画の基本なのかもしれないけれど、しかし実際にこうした作品にはそうそう出会うことがありません。もっとも映像自体は非常に独特で、好き嫌いが分かれるかもしれないです。鈴木清純や荒戸源次郎と仕事をしてきた人ですから、当然ですが*1。ただ、食わず嫌いは禁物ですよ。
とにかく、映画をとても熱心に研究して、映画をよく知っている人の作品でした。僕にはそう思えました。非常に信頼できる監督です。僕が感激していることを、うまく伝えられているかしら。

*1:昨日の日記で、パンフを先に読んでおいてよかったと書いたのは、監督のプロフィールを知って、心の準備ができたから