「花とアリス」を観たのに何も書けなかったことの反省会

岩井俊二に負けた。そうとしか言いようがないんです。結局のところ、感想の取っ掛かりを僕に与えてくれなかった。もちろん、だれそれがかわいいとか雨を降らせすぎだとか、書けないではない。だけども、そんなことを書けば書くほど、僕がこの映画で抱いた印象から遠ざかってしまう。たしか今年17本目だったと思うけど、ついにノックアウトですね。監督、御見それしました。
ということを書いてしまえば、あとはいくら薄っぺらいことを書いても許されるかしら。まるで岩井俊二の教科書なんです。清水ミチコ松任谷由実の作曲法を物真似するけど、ついついあれを思い出してしまう。うわー、いかにも岩井、というシーンの連続。セルフオマージュなんて言葉はないけど、そう表現してもいいかもしれない。
ただね、僕はそんなに岩井作品を観たわけではないけれど、すごく視線が優しいのだけは分かった。そういう質感を作り上げただけかもしれないけど、女の子ラブなんだと信じたいね。これまでも女の子の映画をいっぱい撮りたかったけど、好き過ぎて表現できなかったとか、照れ隠ししてたとか。だって、結構エロいんですよ、今回は。
そんな監督への妄想を抱かせるに十分なほど、蒼井優鈴木杏がかあいいんですね。このふたりの掛け合いは、もうずーっと見ていたい。とくに蒼井優は本当にいいね。実は岩井映画に欠かせない存在じゃないかしら。あのらっきょうっぷりがまた。崎陽軒の醤油差しみたいな表情をするんですよ!
監督はこの作品をコメディだと思ってます。確かにコメディです。ニヒヒヒ、なんて笑えます。でも、すべてのギャグやジョークに岩井マジックがかかっていますので、うっかり見逃す危険に注意しないと。僕は今になってひとつ、映画館で笑い忘れた場所に気付きました。なんだか、現実のストーリーじゃないんだよね。ファンタジーに近い。まさに、不思議の国の花とアリスです。
最後にひとつ疑問を。途中、マツモトキヨシの買い物袋が小道具として出てきます。あの作品のなかにいきなりマツキヨというのはすごく違和感がある。どうしてあの場面で。別にマツキヨのスポンサードがないと完成しなかったわけではないだろうし。えい、マツキヨも岩井マジックにかけちゃうぞ、みたいな監督のお遊びだったら楽しいんだけど。
(追記)すでに話題ですが、思いっきりチョイ役で有名な役者が起用されているので、見逃さないでください。とくに、伊藤歩は難しいですよ。
(追記2)マツモトキヨシ問題ですが、実は「マツモトヒトシ」だという情報が舞い込んで来ました。教えてくれた方、ありがとうございます。しかし分かりづらいギャグだなあ。蓮實重彦と対話してる気分だわ。いや、経験はないけどさ。