安倍ちゃん@市川市文化会館、昼夜

ネタバレがお嫌いなあなたのために、前振りを書いて、いまのうちに目をつむる権利をあげます。
突然ですが、僕が「推し順」について言及しないのには、ふたつの理由があります。ひとつはよくある話で、たとえ下位であってもみんな好きなので、下手に細かい順番を定めたくないということ。そしてもうひとつが案外重要で、1番のほかに「永久欠番」が存在するということ。
田辺マモルも『プレイボーイのうた』のなかで、かつて好きになった女の子を「君は心の永久欠番さ」と歌いましたが、世の中には、順番をつけることができない位置があります。僕の場合、それがなっちであり、夏にはこんこんがふたり目になります。だから、仮に誰かをイチ推しと称しても、彼女たちが2番以降だなんて、口が裂けるちょっと手前まで言えません。
そんなわけで(どんなわけだ)、市川まで行ってまいりました。実際のところ、7日のさいたまで燃え尽きた感じがしていて、チケットを売っちゃおうかと真剣に考えていました。貧乏だし。しかし手元にチケットがあるということも、それを売るタイミングを逸したことも、ある種の定めと思い、会社の飲み会に朝までつき合わされた重たい体のまま、なんとかしました。
さて、ここから本題ですからね。体はボロボロになりましたが、ものすごく楽しかった。感動した。やっぱり行ってみるもんですね。いろんな意味でとてもよかったのですが、安倍なつみってすごい! と改めて確信した次第です。彼女は極めて大雑把で、でも勘がよくて、それはそれは気が強いですが、いろいろあったシーンのなかでも、いまはことさら安定しているような気がしました。いま、どの方向を向いて進めばいいのかという点が、ハッキリしている。迷いがない。
また脱線しますが、僕も北海道の生まれ育ちで、祖父母が住んでいたため、長期休暇は室蘭で過ごすことが多かったのですね。そしていま、故郷を離れて働いている。その「愛郷心」に加えて、同じ体験を経たものにしか共感できない関係「戦友」としての部分を、彼女に、120%一方的に感じております。世代もほぼ同じ(僕は80年生まれ)ですからなおさらです。そういう彼女が、どういった進み方をしているのか、というのは、実は僕にとって非常に重要な参考書なんです。
本題に戻します。つくづく思うのは、2枚目のアルバムが名盤だということでして、セットリストがアルバム曲が溢れかえっているので、満足しないわけがない。安倍ちゃんにも「歌情」という言葉を差し上げたいと思うのですが、ほんとうに情感たっぷりに歌い上げてくれます。『エレベーター二人ぼっち』『夕暮れ作戦会議』『学生時代』などの演出が憎いですね。たとえばMCで「そんな話を夕暮れのカフェで友達とね、」と話してから曲を流すという演出が嫌らしくないのは、彼女にとってそれが背伸びでなく、充分にリアリティをもった設定だからですからね。曲が、肉体の一部となって機能している。
MCといえば、昼はグダグダでしたね。アドリブがアドリブをよんで、収集つかない展開になって。ここのMCってこんなに時間をとっていいのかしらって、僕らはよくても、スタッフがやきもきしていたと思いますよ。腹を抱えて笑いましたけど。かつて老人力という言葉がはやりましたけど、彼女には「母力(ハハヂカラ)」があるね。たぶん。
アンコールで『I'm in Love』を初めて聴きましたけど、これいいなあ。本当に今年は当たり年というか、いい曲がほいほい転がり込んできている。安倍ちゃんに提供したいと思わせるものがあるからこその話で、きっと上げ潮の季節なんでしょう。ラスト『腕組んで帰りたい』も大好きな曲だし、いやはや、桃源郷のようなコンサートを見てしまいました。
というわけで、すっかりナッチホリック状態で、DVDマガジンなんか買っちゃったじゃないか。金欠で悩んでいるというのに!