なんて豪華なB級映画 『男たちの大和/YAMATO』

実は、予想していた以上にまともな作品になっていて、かなり驚いています。いつだったか、この作品の製作発表があったとき、これは正気の沙汰でないと哀れんでおりました。ところがこういった作品に出資したくなる人びとが意外にも多く(いや発表段階から分かっていたのでしょうが)、なんとも贅沢な作品に仕上がったと言えましょう。
戦時中のシーンについては、かなり満足しています。戦闘シーンは、いやあよく撮ったなあという印象です。アメリカの作品をいろいろと研究したでしょうけど、僕は、同じくアメリカ作品を意識しただろう韓国映画ブラザーフッド』を思い出していました。細部まで徹底して作られたセットと、こてんぱんにやられていく戦艦大和の激しい光景が、観る者を圧倒します。
一時帰宅中の兵隊たちのシーンも非常によく描いていました。演出も丁寧だし、セットも本当によくできている。まだ日本国内であれらを撮影可能なんだと、感心します。
それから、役者のよさにも触れねばなりません。ほぼキャスティングに間違いはないと思いました。ほぼ。この作品の見所は最後の1時間に集約されていて、その時間帯は誰ということなく、いい演技をしています。奥田瑛二がおいしい役どころで好演していたのが印象的です。そしてだれよりも、作品の前半からの熱演が光ったのが、蒼井優でした。作品の魅力の半分は彼女が作りました。とことんいい役者です。褒めちぎりたい感じです。
で、ここからが重要なんですが、これだけ贅沢なつくりをしているのに、現代のシーンの薄ら寒さが作品のポジションを決定づけています。最高に豪華なB級映画、あるいはどこかの教育用ビデオ。より具体的には、鈴木京香の目がイッちゃっていて、大和の遺族というより、ただの極右にしか見えない。仲代達矢の演技はいいと思うのですが、ここぞというときにバッタリ倒れるあたりが、ジェームズ・ブラウンっぽくて引きました。解説台詞がやたら多いし。テレビ臭さが残ります。
そう、なんだか土曜ワイド劇場っぽいのよね。そう感じたのは『半落ち』以来です。本田博太郎が両方の作品に出演しているなあ。とにかく、惜しい作品だとは思います。
(追記)奥田瑛二ってキーワード化されていなかったのね。ものすごく意外。