八月の二番勝負

昨日はまたしても(昨年もそうだった)駒大苫小牧のせいで家から出られず、倒れるまで映画を観ようかと考えていたのに、計画が崩れまくり。テレビでは、野球が終わったら『日本美林紀行』が始まって、もう釘付け。お陰で、ものっすごくダラダラできた。
で、満を持して東京二番勝負です。

撮影がたいへんだったのは分かるけど 『大韓民国憲法第1条』

議員の死去で与野党同数になった状態で行われる補欠選挙。どう考えても権力者同士の汚い争いになるはずだったのに、そこに娼婦が立候補したら、不満を抱えた下層民たちが支持しはじめて...。
どこの国でも、政治の実権を握るのは、権力者ときています。後期近代の与党も野党も保守的で、実はサイレント・マジョリティが倍々ゲームで増えていることに、気付いていても目をつぶっている。あるいは彼らを本気にし得ない。たとえばこの作品の撮影は、幾多の困難に見舞われたようです。
しかし作品そのものは実にユーモアにあふれていて、コメディに近い。権力と闘い、権力を笑うという構図は、見事に描かれていたと思います。その意味で、終盤はよく出来てますよ。ラストシーンは賛否両論だろうけど。僕は反対かな。
判官びいきの日本人からしても、かなりスカッとする作品だと思うのだけれど、なんとなく釈然としないんですよね。おそらく、人間関係やキャラクター設定の見せ方がボヤッとしているんでしょう。かなりたくさんの登場人物が出てくるから、ここにはもっと気を遣ってほしいですね。あとは、肝心の立候補の動機やその後の心情の変化が、人の心を打つものなのかどうか、もうひとつです。
それにしても、観客はよく笑っていたなあ。僕の評価が無用に辛いのかしら。

絵画のような風景のなか、シンプルで皮肉たっぷり 『七人の弔

比べてしまえば、圧倒的にこちらのほうが面白い。ディテールやスケールでは遠く及ばないし、登場人物の描き方にも不満はあるのに、こちらの勢いが勝っています。
全体に、作品が落ち着いています。描かれる山村は、まるでピサロの絵画のようで、ひたすら美しい。最初と最後に出てくるバスのシーンはすばらしい。それらが、作品を引き締めていて、すごくうまみがあります。
思い出すのは、『バトル・ロワイヤル』や『ディスタンス』。主役のダンカンは、まるでキタノ教師のよう。監督であり主役のダンカンの自作自演は、本当に見事でした。たぶん褒めすぎてますけど。
ただ、カメラの使い方やカットの構図など、本当に安定していて、見ていて安心できるんですね。新しいことをしないで作る、ということが徹底されているのでしょう。そして最後のどんでん返しに、監督の優しさがあるんだなあ。
とにかく、最初の山村のカットで、この映画は成功してるんです。