晩秋の東京映画3本勝負

ものすごく疲れてたのと、荷物がものすごく重かったのと、とりあえず今回は買い物をしたかったのとで、2日で3本という慎ましやかな結果となりました。結論を先に書きますと、最近にしては稀に見る不作続きでした。

そもそも映画とはなんなのかを考えさせられる「青い車

ぜひとも確認してみたい。僕が月曜日にシネ・アミューズで観た作品は、「青い車」の本編ですよね。2時間ある予告編じゃないですよね。あれで全部なわけですか。You're kidding! とか英語で言っちゃいそうなほどに、1,500円を返してほしい気分。というか、儲けさせちゃだめだよ、あんな作品で。でも、宮崎あおいだし、音楽は曽我部恵一だし、ARATAの人気のほどをよく知りませんけど、たしかにお客さんの入りはよかったですよ。お前ら、ハウルに行け! まだ観てないけど、あっちのほうが面白いから。はやく観に行って、来月行きたいおいらの座席を空けておけ!
まず、あの薄っぺらな内容と意味不明のブツ切り編集と、役者の三文芝居と、無駄に音楽でつないでいこうとする脚本の、どれを取り上げて書こうにも、もうどうしていいか分からん。心の奥底で、あれは感想を書くような作品じゃないからいますぐ筆を置けと、何者かが囁いてますよ母さん。誰が悪いんですかね。ある意味これは、あの三流の雰囲気を一流の演技でぶち壊した宮崎あおいのせいなのかもしれません。宮崎あおいをかわいいと思える人専用の映画ですかね。あと、僕には魅力がよく分からないけど、麻生久美子を好きな人もそれなりに楽しめるかも。あとの要素で楽しんだら、それあーた、変だと思うよ。
それで、きっとこれはたいしたキャストで製作したわけではないんだろうと思っていたのだけれど、監督にしろ脚本にしろ、それなりに評価のある人なのですね。彼らを評価した人が狂っているのか、僕が狂っているのか。これは二者択一だと思う。
僕は、映画というのは自分とスクリーンとの対話なんだと思っています。スクリーンは語るし、僕もスクリーンに語りかける。そのコミュニケーションのうまくいった作品は、僕にとってのちょうどよい作品。たくさん観ていくうちに、語ってくれるスクリーンが少しずつ増えてくる。先日まで産経新聞で連載されていた小津安二郎の人物伝でも、青年期の小津には、それまで記録するだけだった映像が表現しようとしていることが衝撃的であったと描かれていた。
でも、この作品のスクリーンは、なにかを表現しようとしていたとは思えない。結局のところ、なにも語ってはくれなかったと思う。それって、映画なんだろうか。映画ってなんだ。お客もずいぶん舐められたもんだなと感じずにはいられない。
眠いので、続きはまたあとで。

お父さんのバックドロップ」は勢いだけじゃない

しかしどういうことなんだ、昨今のプロレス映画の続発は。おもしろいぞ。プロレス映画というのは、選手も観衆も目がイッちゃったガイキチで、なんか勢いがあって、よく分かんないけど最後に正義が勝つように作っておけば、たいていは感動できます。いい過ぎかな。一生懸命作った人に悪いよな。でもそんなもんだと思うわけです。
で、この作品が(僕が今年観た)いままでのプロレス映画とちょっと違うかなあと思うのは、子供の世界というもうひとつのストーリーがあることで、これがまた非常に瑞々しく描かれていて、好感が持てます。タイトルどおり親子のお話なので、親の苦悩と子の苦悩の両面が、最終的にはドッカーンで解決するわけなんですが、とくに選手じゃないほうの子供の世界を詳しく作ったのが素晴らしい。というのも、神木隆之介がかわいいのね。売れっ子のようですね。いやあ、男子萌えできますよ。「インストール」にも出演しているそうで、これ、見ないわけにはいかない。
実際のところ、プロレス映画でもっともしんどいのが試合のシーン。本物のプロレスラーが主役の場合は心配ないのだけれど、たいていは役者がプロレスラーに扮するわけで、肉体づくりもそうだし、そこそこ試合しているように見せないとならないし、それはそれはたいへんです。そこのところ、宇梶剛士はよかったですよ。いい肉体で。さすがです。演技も安心して観ていられますし、文句ないです。
似たような映画をいろいろと観てきましたけど、そのなかでは上位のほうだと思います。大阪映画らしく、ギャグてんこ盛りで、とくに瀕死の中島らもが好演していたのが、ギャグとしか言いようがなく、最高でした。命と引き換えにギャグをやってるんだから、ロックやなあ。なんかうまく感想を書けてない気がしますけど、酔ってて検証できません。あしからず。

ロード88」の世間の評判はいったいなんなのか

世間の評判がいいような気がしたのよ。じゃあどこを観てそう思ったのかと言われれば記憶にないわけだけれど。蓋を開けてみれば、アミューズアミューズによるアミューズのための作品じゃないの。まんまと釣られた。サザンの新曲を必ず1位にできる実力を遺憾なく発揮した結果、根拠はないけど名作っぽい雰囲気になっちゃったと。まったくうっかりしたものだと思う。
それにしても僕を除くたくさんの観客は(とてもたくさんいたのだ)、いったいどこで情報を聞きつけてきたのだろう。パッと見たところ、BOYSTYLEのことなんかさっぱり知らなそうな人が大勢を占めてるし。だいたい僕だってよく知らないよ。隣のおっさんに聞いておくべきだったか。
最近は日本映画もずいぶん進化しちゃって、「ベタな映画」の水準がすっかり上がってしまったので、この作品をベタというわけにはまいりません。全体的にいかにもな三文芝居の連続だったこと、主役の村川絵梨がさらに上を行く学芸会ライクだったこと、白血病についてとやかく言いたい映画にもかかわらず、なぜかやくざが出てきてバイオレンスな展開になるなど無駄な脚本だったことが、おもな失敗原因でしょうか。流血するのってアリか。いや、それ以前に安っぽい編集だったというのも失敗だな。やはり四国八十八ヶ所といえば「水曜どうでしょう」でして、それを意識した演出がなされていたにもかかわらず、オリジナルをちっとも尊重していないあたり、いま思えば、しっかりしろアミューズと言ってやりたい気分です。本当にアミューズとして製作したのかこれ。
作品の最後にドナー登録へのお願いメッセージが表示されるのですが、患者と髄液の型が一致のするのは「ほかでもない、あたなかもしれません」と書いてありまして、ああ、製作陣も「その程度」の作品ということにしておいてほしいんだなという、暗黙の要請を受けた気がしました。相変わらず僕は酔っているので、念のため書いておきますが、この作品を礼賛する声があったら、フェイクだと思っていいです。お客も舐められたもんだ。そんなことより、おいらよりはやくハウルを観に行け!