パレードがやってきた

紺野あさ美写真集「ASAMI KONNO」が、無事、我が家に届けられました。今朝、最近にしてはずいぶん早く家を出たのが災いしたようで、夕方に一時帰宅すると、午前10時に不在通知を郵便受けに入れられていました。空が一気に暗くなっていくなかで手にした大きな箱と小さな箱には、差出人は違えど同じものが入っているのに、思えば今までにしたことのない種類の買い物にもかかわらず、不思議と馬鹿らしさを感じません。そしてその箱の一方を開封して手に取った表紙に、僕は思わず、深いため息をついてしまうのでした。
1ページ、1ページ。めくる不安と見る不安に胸を締め付けられ、幾度も閉じてしまおうという衝動に駆られながら、それでも何とか最後まで見てしまうと、心にぽっかりと穴があいたような気分になりました。そこには、いつも何かに不安そうな、それで僕たちをさんざん不安にさせてきた、あのポンちゃんはいませんでした。ポンちゃんは、僕が思っていたよりも、ずっとずっと、大人になっていました。すっくと立ち、まっすぐにレンズを見つめるその目と、わが部屋を夕闇が襲うその空気の重さがないまぜになって、湧きどころ知れぬ新しい不安が現れました。ただ食べ物を眼前にしたポンちゃんだけが、僕に安心を与えてくれているようでした。不安がないことは、なんて不安なのだろう。
たぶん、長い長い坂の途中、止まりそうになる足を一生懸命に上げてゆっくりと登る姿を、僕たちはじっと見ていたのだと思います。それなのに、いつの間にか背中が見えてきて、背中しか見えなくなって、とっても高いところまで登ってしまっていたことに、気づくのがちょっと遅かったのかもしれません。いまポンちゃんは、1本目の坂をようやっと登りきって、ふうと息をつき、額の汗をぬぐったところです。
さてどうしましょうか。新しい坂を登ろうとするのを、もいっかい見ましょうか。それとも、この坂を新しい誰かが登ってやってくるまで、じっと待ってみましょうか。僕はもう一度ポンちゃんの背中が見えるところまで、迷わないで歩いていけるかな。パレードが通り過ぎてしまう前に。
おめでとう。いい写真集でした。もうすぐ、4年目のポンちゃんが始まります。