「バーバー吉野*2」はスッキリ楽しいぞ

去年の東京国際映画祭に出品されていて、非常に気になったものだから、楽しみにしてみてきました。そして、その期待を裏切らなかったのが、すごい。ゲラゲラわらかしてもらいました。
昨日の「リアリズムの宿」と同じく、寂れ気味ののどかな田舎町が舞台。この町の名物は、吉野のおばさん(もたいまさこ)。本人曰く古来よりの「伝統」である髪型「吉野ガリ」を、小学生たちに施すことを、日々の生きがいとしています。しかし、東京から、茶髪のイケメン転校生がやって来て大騒動に。自分の髪型が恥ずかしいことに気づいちゃった思春期の子供たちは、かっこよくなろうと奮闘します。後半はイケメンを巻き込んでの、和製「スタンド・バイ・ミー」と化します。
その後半はさほど面白くもないけれども、そこにいたるまでは、テンポもいいし、登場人物の個性の描写もとてもよくて、とくに子供ならではの感性や下らなさを良く捉えているのに、感心さえします。ストーリー展開も、オーソドックスで安心してみていられます。教育テレビのドラマを思い起こさせます。ほのぼのと、しかししっかり笑わせてくれる。これはすごく大事なことです。
とくになんといっても、もたいまさこがすばらしい。ひらがなばっかりだな。でもすばらしい。ものすごいパワーで子供に迫りますが、かといって社会的にはじかれるような個性ではない。むしろ、社会に大事にされているキャラクターになっています。田舎町のムラ社会にあっては、この人物設定がすごく微妙なはずですが、これは完璧と言っていいです。べつに特別なメイクや小道具をしているわけではないけれど、しばらくは「吉野のおばさん」としか見られそうにないです。怪しげな体操と、ラスト近くに見せた物憂げな表情を忘れられません。
個人的には、「けけおじさん」(たぶん森下能幸)を好きでした。これは、見てのお楽しみです。ちょっと大泉洋のコントっぽいです。あとは、みんなが大好きな少女が岡本奈月であることにまったく気づかなかったことが、ちょっとした僕の反省点です。