エルミタージュの天井

宿のおばさんは、粘着のあるコロコロのでっかいので床のごみ取りをしている。ほうきとちりとりがこの国にもあったことちょっと驚いた。おばさん、息切れしてますよ。大丈夫ですか。水を一杯飲んでる。
そうそう、ペテルブルクの水はよくないと聞いていたけど、ここの水はきれいだ。おばさんがいま飲んだのも水道水だ。お湯もふんだんに出る。水洗トイレは清潔で、紙も流れる。いや、バケツがあったので、そこに捨てるべきだったらしいのだが、いつもの習性で1枚、便器へ入れてしまったのだ。ちゃんと流れた。もっとも以後は気をつけてバケツに捨てるようにしている。

(宿のなかの様子。共用のキッチンやロッカーを自由に使ってよい。ぶれているが、カゴメのとんかつソースを発見。売っているようだ。)
ダムが起きてこないので、部屋を出て、廊下の机でこれを書いている。この国には日本のメーカーがけっこう来ているようだ。バスの車窓からはスバルのディーラーを見たし、宿のテレビはパナソニック。ちなみに電子レンジはサムソン。洗濯機はヨーロッパか国内産のようだ。
さて。この旅の最大の目的は、エルミタージュ美術館である。とにかくここを訪れないことには始まらないし、時間が足りなければどうしようもない。そのため、今日、早速訪れることにした。ここでどれだけの時間を使うかによって、すべてのスケジュールが変わってる。出来れば午前中にここをやっつけて、午後は別の美術館や博物館を回りたい。
ダムが起きるのをあきらめて、そっと部屋を出た。朝食、街のカフェに挑戦したかったが、ちょっと勇気が出なかった。初日だから仕方あるまい。ということで昨日発見したKFCへ。どの国に行ってもファストフードはレジのところに写真がたくさんあるのでありがたい。なかでもいちばん大きな写真のピタサンドを指差した。それからコールスロー。日本でのロシア語の勉強が功を奏して、なんと、料金表から「サラダコールスロー」なるキリル文字を発見できたのだった。生野菜は不安だったが、挑戦してみるしかない。飲み物はペプシにした。立派な写真を指差すだけだったので。
ペプシは紙のカップだけくれて、あとはセルフサービス。いわゆるドリンクバーである。氷はない。寒い国なので不満はまったくない。周りのテーブルを見ていると、紙コップのドリンクバーなので、帰り際に満タンにして席を出て行く女性もいる。懸命な手段だ。でも彼女よ、食べかすをきちんと片付けていきなさい。

(KFCでの食事。店内はクリスマスの装飾が見られた。右は朝のネフスキー大通り。)
食事は、十分に食べられるものだった。KFCなんだから、と思うものの、コールスローもきちんと食べられる代物だったのは、なんとなくほっとさせてくれる。ちなみに写真はないが、この国のKFCの主役はカーネルではない。彼も活躍しているが、鶏マークの独自デザインのロゴが前面に出ている。カーネルはちょっとアメリカっぽすぎるのかもしれない。あしたは地元のカフェに挑戦しよう。
さて、午前11時頃、ついにエルミタージュに突入した。撮影できるチケットを買って、地下のクロークでコートを預けて、空港のような身体検査を経たら、なかに通された。そして気付いたら夜だった。測ったわけではないが、6時間は滞在したはずだ。午前中は空いていたkacca(券売所)も、午後、窓から眺めると、50m以上の列を成していた。



(朝焼けに照らされた宮殿広場とエルミタージュ。下段は門をくぐった中庭。外壁の装飾に早くも感激。)
僕のお目当てはなんと言っても3階のヨーロッパ近代絵画だった。しかしそれ以外の空間の装飾があまりに素晴らしく、夢中になってしまい、大いに時間を費やした。ほとんど天井ばかり見ていた。きらびやかなものもあれば、可愛い模様も。見せてやりたい人もいたんだけどな。きっと感激してくれただろうに。というわけで、天井コレクションをどうぞ。


(絵画を撮るのを忘れて天井ばかり撮っていた。こんな美術館は初めてだ。)
次回は目当ての画家との出会いを。