しらけどり映画大賞2008

たいへん長いことお暇をいただいてしまいました。映画は観ていたのですが、それ以外にいろいろのことがありすぎて、まったく更新できませんでした。
毎年、今年こそはと書いているのですが、いよいよ本当に映画から少し離れる可能性があります。少なくとも年間80本ペースで観続けることはないでしょう。そんなわけで、誰に頼まれるでもなく勝手にやっている企画も今回が最後かもしれません。
2008年にわたくしが観た映画のうち、日本映画のみを対象にして、作品のベストテンと演者選をいたしました。対象はこちらをご参照ください。あれを観ていないのに選評などけしからん、というお声もあるでしょうが、それなりの数を観たうえで選んだつもりですからご容赦ください。

2008年作品十選(数字は順位)

  1. 三本木農業高校、馬術部 〜盲目の馬と少女の実話〜
  2. あの空をおぼえてる
  3. 歩いても 歩いても
  4. ブタがいた教室
  5. アフタースクール
  6. 青い鳥
  7. 人のセックスを笑うな
  8. クライマーズ・ハイ
  9. 実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)
  10. おくりびと

日本映画のブームがこんなに長続きするものとは思わず、いつも、来年こそは斜陽にと思い続けていたのですが、実に粒ぞろいの一年になりました。逆に言えば、突出した作品がなかったとも思います。それだけに1位を選ぶのがたいへんでしたが、地味ながら本当に丁寧に描かれた1を。キャスティングのよさもさることながら、彼らへの演出のよさがなおいっそう光っていました。舞台が東北だったことで親近感が沸いたかもしれません。
2ですが、わたくしはこの監督の作品を初めて観たので、その観点からとやかく書くことは出来ません。ただ、表現が一貫していて、繊細で、子供たちの歌も父親の写真も、それぞれが美しく融合していて、感動しました。
3については、ストーリーそのものはさほど趣味ではなかったのですが、そんなことを言っていられない出来のよさがあり、この位置に。思えばこのベストテン、小学校から大学まで、学校が舞台になった作品が多いですね。6はあまりにも淡々と描かれすぎて、鑑賞後も印象が風のように過ぎ去りそうでしたが、納得できる作品でした。
8と9は、勢いそのものです。作品としての美しさを問うものではありません。ただただ圧倒された結果です。10は迷いました。とてもいい作品なのですが、こうやって並べてみるといかんせん地味で、ベストテンからこぼれそうになったのですが、テーマといい演出といいすばらしかったのでこの位置においておきます。
泣く泣くベストテンから漏れたのは、『奈緒子』『釣りバカ日誌19』あたりでしょう。釣りバカをベストテンに入れられる最後のチャンスのような気がしていたのですが。

2008年主演十選(五十音順)

こちらは割りとすんなりと決まりました。太字は男女それぞれ今年いちばんと思った方です。小池栄子は本当に怖かったですね。怖いといえば坂井真紀が学生役から特殊メイクまで何でもありでした。小林薫は逆に、『歓喜の歌』のコミカルさはすばらしかったです。なお、田中麗奈には『犬と私の10の約束』もありましたが、あくまで『山桜』のみの評価です。永作博美ってたぶん毎年選ばれてます。よっぽど好きなのかといわれれば、そうですといわざるを得ません。池脇千鶴は助演だと『丘を越えて』『20世紀少年』『ホームレス中学生』もすばらしかったことを付け加えておきます。

2008年助演十五選(五十音順)

太字は男女それぞれ今年いちばんと思った方です。年に一度の勝手な企画で役者に言及するようになって4回目になるのですが、うち3度登場したのは蒼井優永作博美だけです。さきほど読み返してみて、意外とバラエティに富んでいることに気付きました。堺雅人は主な映画賞を総なめしていますが、やはり文句なしです。ほか樹木希林を評価する声が高くて、わたしもそう思いますが、並木愛枝の驚異的な怖さが衝撃でした。あれはもう二度と見られないように思いますので、当ブログではこちらを筆頭としました。
2007年の松重豊がそうだったように、抜群の安定感にぐっとくるバイプレーヤーが現れます。今回は菅田俊でした。俊敏なアクションからまだらボケまで、背中で語りつくす演技にやられました。『休暇』から主演・助演で3名が出てきたのは偶然であり、作品の質からすれば必然ともいえます。また、ここのところの常盤貴子がすごくいいんですよね。柳沢ななは演技力というよりもスクリーンをもっとも華やかにしたということで選んでいます。
なお、( )は対象作品ですので、対象としない作品は記載されません。蒼井優は『TOKYO!』(外国映画)、『百万円と苦虫女』(主演)もよかったことを書き留めておきます。

2008年新人十選(五十音順)

この選定は今年が初めてです。基準はキネ旬と同じに設定しています。太字は男女それぞれ今年いちばんと思った方です。『子猫の涙』の藤本七海は圧巻でした。年の初めのほうに観た作品でしたが、彼女を上回る新人は現れないだろうという確信がありました。と同時に、ベストテンにはできませんでしたが、作品のすばらしさも評価しています。愛すべき映画でした。その点でいえば、ここで『きみの友だち』を紹介できてよかった。この作品も同様に、ベストテンではないけれど愛すべき作品です。廣木監督は石橋杏奈に素敵なデビュー作をプレゼントし、彼女もそれによく応えました。サントラを買うぐらい好きな作品です。
おそらく2008年の賞レースは井之脇海ということになるのでしょう。しかし同作の児嶋一哉が捨てがたい。佐田啓二を思い出すような雰囲気をまとい、お笑い芸人が持つ「嫌味な上手さ」を削ぎ落とした演技が印象的でした。
さて、だらだらと更新していましたが、この話題はここまでです。次回は映画を離れて、旅行記が始まります。お楽しみに。