オールスターゲームがはじまる 『リボンの騎士 ザ・ミュージカル』

僕がいちいち書くまでもなく、各所で好評ですね。そして僕もまた、絶賛したいと思います。たいしたもんだ。これはすごいことになってますよ。
この芝居にはいろんな褒め方があると思うのですね。いままで彼女たちがやってきたミュージカルのなかで一番いいとか、彼女たちがやるわりにはよくできた芝居だとか、作り手がしっかりしていればいい芝居になるんだとか。それはもっともなんですけど、それ以上の、総合力みたいなものがすごいんですよね。
たしかにものすごいスタッフに囲まれて、魅力的な作品に仕上がっていました。脚本、演出、音楽、衣装と、メリハリが利いて、しかも分かりやすく、正直なところ、ずっぽしはまって観てました。なにせ客のほとんどは観劇の素人ですから(僕を含めて)、われわれに分かるものをつくろうとすると、やっぱり苦労が耐えないだろうと察するわけです。でもそれをさらりとやってのけるのだから、ただものとは思えない。
日頃から、個性や才能は他人が決めるもの、と考えていますが、メインキャストであるハロメンの彼女たちでさえ例外ではないはずです。だれひとりとして1級品はいないけど、それでも花を開かせるチャンスと、背中を押すちょっとだけの力と、組織力と根性で、ここまでやってきたわけです。ただ僕にしても、長く見ているとどうしても慣れてしまうもので、夏の日のチョコレートのように、感覚が弛緩してしまう部分は否めませんでした。
それが今日、とてつもなく新鮮な気分を味わえたのでした。あんなにいい声で、あんなにいい動きで(それも統制のとれた)、あんなに活き活きとした彼女たちって、久しぶりな気がします。今年の夏は、なんていい経験をしたんだろう、一皮剥けたよなあ、なんて。まるで芝居の終わりのように、ふたたび魂を授かった、生まれ変わった彼女たちに会えました。
誰といわずすばらしかったのですが、特筆すべきは高橋愛石川梨華でしょう。とくに舞台の世界では、存在ではなく、演ずることによって役を認識させられるというのには、役者の本懐みたいなものがあると思うのですね。愛ちゃんはそれを地で行く感じでしたね。歌もすごくよかった。そして梨華ちゃん(今回はフランツ役)が、妙にいいんだよね。実はこの人に一番感激しています。
そしてこの新しい彼女たちは、きっとすごく面白いものを見せてくれるに違いありません。夢のオールスターゲームがはじまります。