観るべき人が楽しそうだったから成功してたような「パローレ」

池袋はサンシャイン通りにあるHUMAXは座席指定制なのだそうで、早めに着いてしまった僕は意気揚々とチケット売り場に向かったところ、ただチケットを渡されておしまいでした。劇場には、混雑しないという強烈な自信があったのですね。お陰ではっちゃきこいた人みたいではんかくさかったべさ。
実際に劇場に行ってみると、確かに空いてましたね。無理もないです。とはいえ、客の9割以上は若い女性でして、久しぶりの光景でした。よーく思い出してみたら、「ガキンチョROCK」以来。どちらも前田哲監督。芸人が主役。そうか、こういうのが前田的コメディなのかと一人合点いたします。
話を少し戻します。前田哲監督の最新作は、くりぃむしちゅー初主演のコメディです。コントとコメディの境目がよく分からないうえ、くりぃむしちゅーの芸風を知らないのですが、コメディと見ていいのでしょう。彼らは主演ではありますが、ストーリー上はキーパーソン的な立ち回りで、実際に中心にいるのは中年カップル(コント竹田君、烏丸せつこ)です。粗筋は非常に面倒なので書きません。
ほとんど設定に現実的なところはないので、意味不明のドタバタが終始します。おそらく映画として評価するのは困難なのですが、これが前田監督の持ち味なのであれば、現実感のある設定だった「ガキンチョROCK」よりも本人らしさが出ていたのだろうと思います。そしてなにより、練り上げられた脚本で笑いを取っていたのがよかったですね。最近はキャラ重視で、登場が面白ければそれでいい笑いが多いので、この点は評価したいところです。それから、冒頭の竹田君が花束を持ってデートに向かうシーンは、なんでもないのですが、きれいで爽やかでした。そう思って見ていた観客は少なかったと思いますが。
だがしかし、どうだろう。くりぃむしちゅーからすれば、あのストーリーでよかったのでしょうか。ハッキリ言えば、思いっきり下ネタですよ。濡れ場もあるし。いまやお茶の間の人気者になった彼らがやることではないと思うのですがね。もっとも客層を見てもどんな人がファンなのかよく分かりますし、彼女達はとても楽しんでいたので、敢えてその方向で売っていくのであれば興行大成功なのですけど。
客も客です。主役たる彼らが登場するまでやや時間があるのですが、出てくるだけでゲラゲラ笑います。声を上げて。ただ社交ダンスの衣装を着た有田や、血まみれの上田が出てくるだけで、なにも面白いことをしていないのに、ですよ。彼女たちに笑いのセンスがあるとは思えません。ないです。というか、ただ上田と有田が見たかっただけなのでしょう。お笑い界を支えている主要な消費者が彼女たちというのは、あまりにも寂しい。
彼女達はマナーもなっていない。笑うだけならまだしも、横の友達との私語は慎んでいただきたい。スクリーンとブラウン管を勘違いしている。携帯の電源も切らないと。と、ここまでなら怒りの要素ですが、スクリーンに向かって携帯のカメラで撮影している姿を見ると、もう呆れるしかないのです。諦めが肝心ですね。それで一般1800円、学生1500円はあまりに高額ですが。
なお、劇場前に注意書きもあるのですが、フィルム焼きに失敗しているので、映像が縦に揺れます。洒落にならないレベルで。あれで興行できているのがすごい。