「ガキンチョROCK」と「オアシス」と「ヴァイブレータ」

この今回の東京遠征、映画を観ている時間と会社説明会に参加している時間だと、どっちが長いんだろ。ちょっとだけ、映画のほうが長い気がする。実際、そんな楽しみでもないとおいそれと東京に行こうなんて思わない。来週も再来週も、今回ほど長くはないけれども遠征がある。観たいものを散々観きっちゃうと、いよいよ浅草演芸ホール行きになる。でもまだ来週は無理かな。
怒涛のように観てるので、短めに書いていきます。

  • ガキンチョROCK

吉本の芸人が主演のコメディ。キングコングとロザンっていうの*1。そういうわけで、客はほとんどが女性。男はみんな女の連れ。そんななか、背広にトレンチコートの僕。まあ、いいんだけどさ、慣れてるから。テアトルタイムズスクエアはなかなかいい劇場だった。ブルジョワで。予告編で映画以外のCFが放映される劇場って、まだあったのね。
それで感想なんですけど、僕は悩んでます。本当は、前田哲監督を厳しく非難したいところなんです。「スイングマン」「パコダテ人」が秀作だったので、すっかり彼の作品を信用していて、その分、作風がほとんど進化していなかったのがショックでした。そりゃないでしょって。田中要次のギャグって、以前に使ってませんでしたっけ。思い違いかなあ。清水ゆみの声はキンキンしすぎです。
でも、僕はふと考えたんです。今まで過大評価しすぎでなかったかって。前田哲監督といえば、以前は宮崎あおいと木下ほうかと粟田麗が常連で、僕は彼らが大好きなもので、そのせいで作品をよく観すぎちゃってたのかも。もしも「パコダテ人」の主役が男だったら、僕はどう評価しただろう。
悩みは消えないけれど、ひとつだけ言えるのは、監督は僕にそう思わせちゃったってこと。大阪のギャグ映画だからまあいっか、という気もするけど、やっぱり評価は高くならない。次回作を期待していいものだろうか。

  • オアシス

えらい長く書いてますね。こちらは韓国映画。「ペパーミントキャンディー」の監督と主役のコンビでまた作っちゃいました。でも、そう言われないとまったく気づかない。作風もずいぶん違うし、役者が見事に化けきってる。前科3犯のならず者と脳性麻痺の障害者との恋愛劇で、北野映画の雰囲気に似ている。
ハッキリ言ってこれは秀作。役者に万歳。ムン・ソリという「ペパーミントキャンディー」にも出演した女優が脳性麻痺の障害者の演技をしてるんですけど、迫真、というより、何かが乗り移ったような感じなんです。時々シーンがファンタジーになって、その女性が健常者のように振舞うんですが、そのとき初めて、その人が演技しているんだということに気づいたほどです。
でもそれだけの秀作ではない。主人公の人生で、スクリーンに映らない過去で、作品のストーリー性を見事に膨らませてる。そしてラスト。後ろですすり泣く客がいましたけど、分かる。さすがイ・チャンドン監督、やってくれました。何も言うことはないと思う。

時間があったので急遽観てきました。これはストーリーそのものよりも、技術的なところで作品がぐっと魅力的になってました。たぶん、テーマとしてはさほど目新しくないだろうし、特別に脚本がすばらしいというわけでもない。主人公の気持ちを表す字幕はとってもよかったけど。
まずは寺島しのぶ梨園出身の役者があれだけのことをやっちゃったら、賞をあげないわけにいかないでしょ。とはいえ、演技そのものは確かによかった。終わりに向かうに連れ、どんどんよく見えてくる。そして大森南朋も見事。それにしてもこの人は本当に引っ張りダコだね。その意味を裏付ける演技をしてるしね。
そしてカメラワークがいい。風景にしても、固定された長回しにしても、手持ちで顔のアップを長回ししてるのも、とてもきれいで、引き付けられる。で、その映像に音楽がかぶさる。かっこいいのね。はっぴいえんどなんかかかっちゃって。おかげですごくテンポのいい作品になってる。ただ、テンポが良過ぎてちょっと不気味かな。
この作品、95分なんですけど、シーンのひとつひとつはかなり長い。だからシーン数は多くないと思うけど、ロードムービーらしく、ロケハンはかなり広域にやった模様。サボってはいない。きっと低予算で、少ない予算に少ない役者で、勢いよく作って、勢いよく編集したんだろうな。そういう意味では、繊細な部分と荒削りな部分が一体になってるんだね。
前半はエロエロで「嘘-LIES-」を思い出したけど、ラストのコンビニのシーンでは、よくある結論なのに、みんなして感激したんじゃないかな。それもこれも、役者の力によるもの。なかなかの作品でした。
明日はついにジョゼを観る予定。

*1:後者は全く知らないの。